クラスメイトにも絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野と、その藤野が驚愕するほどの画力の持ち主だが不登校の同級生・京本。正反対の2人の少女は漫画へのひたむきな思いでつながっていくが…
『チェンソーマン』の人気漫画家・藤本タツキが、2021年に「ジャンプ+」で発表した読み切り漫画を、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『君たちはどう生きるか』などさまざまな話題のアニメに携わってきた、アニメーション監督でアニメーターの押山清高が劇場アニメ化した作品『ルックバック』のパンフレットを紹介します!
表紙は「藤野キョウ」!『ルックバック』をより深く味わえる内容のパンフレット!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『ルックバック』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
表紙デザイン
A4サイズ(210mm×297mm)のパンフレット。
漫画執筆中の藤野と京本=「藤野キョウ」の姿が、黒の箔押しで全面に印刷されている表紙デザイン。厚いクラフト紙(ボール紙?)のような味のある紙と黒箔押しの相性も抜群。もうこのデザインだけでパンフレットの勝ちは確定したようなもの。
裏表紙は黙々と漫画を執筆している藤野の後ろ姿。表紙同様に黒の箔押し。かなり細かい線にまで箔押しが施されているので、印刷屋さんにとっては緊張感のある仕事だったんじゃないでしょうか。お見事です。鏡に映る藤野の横顔の描写が個人的に好き。
表紙デザインは泣く子も黙るデザイナー大島依提亜氏。さすがのクオリティです。
中面デザイン
本作『ルックバック』のキーカラーであるグリーンを要所で使いながら展開される中面デザイン。作中のカットやイラストが多めに掲載されているので、本作の世界観を存分に味わえます。
右開きで縦書き。文字は基本的に黒でゴシック体が使われてます。インタビューページの文字はやや小さめですが、行間は確保されているし、作中のカットやキャストの写真などが配置されているので、圧迫感や読みづらさは感じないです。
『ルックバック』をしっかりと感じられる素敵な中面デザインですよ。
コンテンツチェック
「STORY」「キャラクター紹介」「美術ボード」「押山清高(監督)× 藤本タツキ(原作者)特別対談」「河合優実インタビュー」「吉田美月喜インタビュー」など、パンフレット読了後にまた本作『ルックバック』をおかわりしたくなるような素晴らしい内容となってます。
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
特別対談/押山清高(監督・脚本・キャラクターデザイン)× 藤本タツキ(原作者)
5ページにわたって掲載されている押山清高氏と藤本タツキ氏の特別対談は必読。いや、超必読。
本パンフレットはこの2人の対談のためにあると言っても過言ではない、とまでは言わないけど、本作『ルックバック』を鑑賞した方なら、気に入った方ならぜひとも読んでいただきたい内容。
「絵描き」についての思いや(藤本氏の学生時代のエピソードはおもしろかった!)『ルックバック』の制作エピソード(押山氏の描線のくだりがよかった!)、「創作」へのモチベーションなど、僕たちのようないち観客が読んでも十分に読みごたえがあるし、これから漫画家やアニメーターを目指す若者にとってはヒントになるようなことも語られて、この対談を読むためだけにこのパンフレットを購入してもいいんじゃないか、それくらいの価値があると個人的には思います。
インタビューで印象的だったのは「アニメ化の際、押山監督やスタッフ陣にお願いしたことはありましたか?」という藤本氏への質問に対する回答。ものすごく素敵で感動しちゃいました。漫画家としてのリアルな世界を知っているからこその言葉で、藤本氏の人間性の素晴らしさを感じました。
大事なことなので繰り返しますが、トップクリエイター2人の対談は超必読ですよ!
キャストインタビュー
河合優実さん(藤野役)と吉田美月喜さん(京本役)のインタビューも実によかった。
河合優実さんは原作『ルックバック』の印象や演じた藤野との共通点であったり、現場でのエピソードや「創作」への思いなどが語られています。
押山氏が「頭抜けた表現力の持ち主」と評してましたが、河合さんの「ディレクションを受けた」エピソードを読むと、アドバイスを受けてからの対応力が優れている方なのかなという印象を持ちました。要は頭が良いんでしょうね。
ご自身の過去、そして現在の表現者としての思いなどにも言及されていて、河合優実さんの根っ子の部分が見える良いインタビューでしたよ。
吉田美月喜さんはオーディションのことや、本作で印象的だった「方言」のこと、現場でのエピソードなどが語られています。
押山氏が「引きこもりというバックボーンを説明なしで表現できる」と評した声に関するオーディションのくだりはおもしろかったです。京本の声を聞くと、確かに、わからないではない(笑)。
河合優実さんと違って、ややテンション高めな(元気な)インタビューで(河合さんがテンション低いというわけではなく落ち着いてるという意味)、吉田さんの等身大を京本という役にぶつけたんだなと感じる、とても爽やかなインタビューでした。
河合優実さんと吉田美月喜さんそれぞれのキャラクターが表れてる素敵なインタビューでしたよ!
その他コンテンツ(STORY/キャラクター紹介/美術ボード/メインスタッフコメント)
映画パンフレットに必ず掲載されているSTORY(あらすじ)は、だいたい1ページくらいで終わるんですけど、本パンフレットはなんと6ページにわたって掲載されてます。
ページの下半分にあらすじが、上半分にあらすじに沿った作中のカットが並べられているので、アニメーションと違って落ち着いて作画を見ることができ、本編に浸れるような作りになってます。とてもグッドなデザイン。街に繰り出した二人のシーンのカットなんて、あらためて見たらたまらんですよ。
そのあとに続くキャラクター紹介や美術ボードのページでは、藤野と京本のキャラクターデザインや表情集、『ルックバック』の世界観を構築した背景美術が掲載されています。
『ルックバック』の世界に浸れる嬉しさはありつつもちょっと切ない気持ちになったりしましたよ(京本のはんてん姿を見るとなんだか胸が締め付けられる)。
最後にメインスタッフのコメントが見開き2ページで掲載されています。皆さんの頑張りやこだわりがわかるし、クリエイターさんへのリスペクトを感じるコメントで、この『ルックバック』という作品の「クリエイター讃歌」的な部分が表出していてとても素敵でした。漫画的な吹き出しを上手に使っている遊び心のあるデザインもグッドです。
総評
繊細な絵を黒の箔押しで表現した大島依提亜氏の素敵な表紙デザイン、作中のカットやイラストが多く掲載されていて、色味を含めて『ルックバック』を感じられる中面デザイン。共にグッドです。
「押山清高(監督)× 藤本タツキ(原作者)特別対談」「河合優実インタビュー」「吉田美月喜インタビュー」など、読むと新たな視点でもう一度本作を観たくなるような内容が掲載されています。
観て読んで観る、これが本作『ルックバック』を堪能できる最適解かと。
デザイン、内容ともに完成度の高いパンフレットです。
お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。
これが1,500円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『ルックバック』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。