ニューヨークで暮らす深い孤独を抱えるドッグは、CMで見た友達ロボットを注文し組み立てる。友情を深めていくドッグとロボットはある夏の終わり海水浴へ出かけるが…
アメリカの作家サラ・バロンによる同名グラフィックノベルを原作に、「ブランカニエベス」で知られるスペインのパブロ・ベルヘル監督がドッグとロボットが織りなす友情をセリフやナレーションなしで描いた長編アニメーション作品『ロボット・ドリームズ』のパンフレットを紹介します!
サイズ感といい、デザインといい、とても可愛らしいパンフレット!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『ロボット・ドリームズ』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
A5サイズ(148mm×210mm)のパンフレット。
ロボットの外箱パッケージ風の表紙・裏表紙デザイン(裏表紙にはピクトグラムが配置されている芸の細かさ!)。
全体的に色味はポップでイラストがたっぷりと掲載されている中面デザイン。
A5という小さめのサイズ感も含めてとても可愛らしいデザインのパンフレットですよ。
表紙をめくった次のページに見開きで掲載されているドッグとロボットの表情が素敵過ぎて泣けます。
コンテンツチェック
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
パブロ・ベルヘル監督
パンフレット序盤。本作を作るためにパブロ・ベルヘル監督自らが課した10個の守るべきこと「監督の十戒」、本作への思いや制作過程などが綴られた「ディレクターズノート(監督の言葉)」、そして「監督インタビュー」。監督のプロフィールを含め12ページにわたり監督をフィーチャーした内容が掲載されてます。
インタビューでパブロ・ベルヘル監督は「企画の発端」「グラフィックノベルを映像化するにあたって」「劇中の音楽」「オリジナルの冒頭シーン」「好きな作品や作り手」などについて語っています。
原作のグラフィックノベルには無いオリジナルシーンについての言及も読んでいて面白いんですけど、パブロ・ベルヘル監督が好きな作品や好きな作り手に関する言及はかなり興味深く読みました。
海外の作品や監督だけではなく、日本のアニメや監督の名前が数多く挙がっていてテンションが上がりました。そして何だか嬉しかったです(僕は無関係なんだけど、日本人として、何となく 笑)。
日本のアニメや監督に影響を受けた監督が素晴らしいアニメを制作して、それが日本で公開されるなんて、ドラマチックですよね。
パブロ・ベルヘル監督はかなり日本に精通している感じがして(本作のミュージックエディターであり奥様でもある原見夕子氏の存在が大きいのかな)とても親近感が湧くインタビューでした。
ニューヨークシティマップ
パンフレット中盤あたりに観音開きで掲載されている「ニューヨーカーたちのイラスト」と、ニューヨークの街のスポット(ワールド・トレード・センターやヤンキースタジアムなど全部で16スポット!)を紹介する「ニューヨークシティマップ」は、とても遊び心があって楽しいページになってます。
劇中では景色の如く見ていた擬人化されたニューヨーカーたちをパンフレットであらためて見ると、とてもキュートです(笑)。個人的に大好きなアニメ『オッドタクシー』を思い出しましたよ。ちなみに『オッドタクシー』は面白いので超オススメです。
「キュートなニューヨーカーたち」の観音開きを開くと出てくるのが「ニューヨークシティマップ」。エッセイストの仁平綾氏がスポットの紹介文を書いているんですが、これがとても面白い。
ご自身のちょっとしたおもしろエピソードを絡ませた紹介文は、読むと思わずニヤッとしてしまいます。個人的にはヤンキースタジアムのエピソードが好きです。
コラム/西寺郷太(NONA REEVES)
「未来へのノスタルジア」と題した西寺郷太氏のコラムがめちゃくちゃ面白いです。西寺氏の膨大な知識量には圧倒されます。
特に僕がすごいと思ったのは時代設定の推察。本作の時代設定はざっくりと1980年代ということなんですが、西寺氏は作中のシーンから読み解いて「1985年8月の終わりにドッグとロボットは悲劇が訪れる海水浴場に向かった」と推察したんです。しっかりと理由付けして推察した過程はぜひ読んで欲しいです。脱帽。すごい。
他にもニューヨーク・メッツのくだりなど、「西寺さん、当時ニューヨークに住んでました?」っていうくらいの情報量と知識量。
本作で描かれているニューヨークがいかにリアリティがあるのかがわかる解説は読んでいて興味深いし、単純に読み物としても面白いです。ぜひ読んで欲しいコラムです。
ロボット・ドリームズ キーワード
パンフレットの最後に6ページにわたって掲載されている本作にまつわる「キーワード」。
劇中に登場するチュッパチャプスやゲイラカイト(凧)、ローラースケートなど25個のワードが解説されてます。
おまけ的なページではあるけど、当時のニューヨークの文化などを知る上で、知識の積み上げになる内容になってますよ。このページを読んだ後にもう一度鑑賞すると、新たな気付きがあって、初見よりさらに作品を楽しめるかもしれないですね。
総評
色味がポップでイラストは盛りだくさんのとっても可愛らしい小型のパンフレットです。
「パブロ・ベルヘル監督インタビュー」「西寺郷太氏のコラム」「ニューヨークシティマップ」「ロボット・ドリームズのキーワード」など、本作のディテールに関することが多く掲載されています。
掲載内容を読むと、1980年代のニューヨークの文化や雰囲気を知ることができ、そして新たな気付きがあります。そこを踏まえてもう一度『ロボット・ドリームズ』を観たくなるような、充実度の高い素敵なパンフレットですよ。
これが1,000円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『ロボット・ドリームズ』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。