『ゴンドラ』パンフレットレビュー。<セリフなし映画>の名匠ファイト・ヘルマー監督作品。

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ある小さな村でゴンドラの乗務員として働き始めたイヴァと、もう1台のゴンドラの乗務員を務めるニノ。威張り屋の駅長には腹が立つことばかり。ある日、2人の奇想天外なやりとりが駅長を激怒させ、やがてそれは地上の住民たちも巻き込んでいく…

『ツバル TUVALU』『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』など、セリフなし映画で知られるファイト・ヘルマー監督が、山の谷間を行き来する2台のゴンドラで働く2人の女性が織りなす物語を描いた『ゴンドラ』のパンフレットを紹介します!

まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:182mm × 257mm(B5)
  • ページ数:36ページ
  • 発行:ムヴィオラ
  • 編集:ムヴィオラ
  • デザイン:大寿美トモエ
  • 発行日:2024年11月1日
  • 定価:800円(税込)
パンフレット掲載内容
  • INTRODUCTION(解説)
  • STORY(物語)
  • CAST(キャスト紹介)
  • STAFF(スタッフ紹介)
  • DIRECTOR(ファイト・ヘルマー監督プロフィール)
  • INTERVIEW(ファイト・ヘルマー監督インタビュー)
  • ESSAY/野中モモ(ライター・翻訳者)
  • REVIEW/ISO(ライター)
  • COMMENT
  • FESTIVALS & AWARDS(映画祭&受賞リスト)
  • DISTRIBUTOR’S ESSAY(配給に寄せて)

「ゴンドラの女性乗務員2人がゴンドラで行ったり来たりするセリフなし映画」(←説明が雑)という独特な作風の本作。

何といってもセリフがないので、解釈は観客に委ねられるんです。つまり余白があり過ぎるわけですよ。

だからこそ作り手であるファイト・ヘルマー監督の考えや作品への思いを知りたく、そして単純になぜ「ゴンドラ」なのか、なぜ「セリフなし」なのか、という疑問を持ったので、何かしらの答えが掲載されているのではと期待してパンフレットを購入しました。

レンツ
レンツ

では、『ゴンドラ』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

B5サイズ(182mm×257mm)のパンフレット。

白い背景にゴンドラ本体とタイトル「GONDOLA」だけのシンプルな表紙デザイン。

大自然をバックにしたゴンドラの方が表紙的に映えそうなものだけど、ゴンドラのみを載せたことによって本編同様可愛らしい雰囲気が出てますね。いい表紙です。

中面のデザインもシンプル。余白や行間がしっかりと取られているので、ゆったりとしていて読みやすいです。ちょこっとイラストが入っているのも可愛いらしくてグッド。

シンプルで可愛らしいデザインのパンフレット。素朴な感じが本作の雰囲気にマッチしていて好感度高いです。

コンテンツチェック

レンツ
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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

ファイト・ヘルマー監督インタビュー

プロフィールを含め9ページにも渡って掲載されたファイト・ヘルマー監督のインタビュー。

監督はインタビューで「この映画をつくるきっかけ」「なぜゴンドラ(本文ではロープウェイと言っている)なのか」「なぜセリフのない映画を撮るのか」など、本作を観て僕自身が疑問に思ったことや知りたかったことに言及されています。それを知ることができただけでも買った甲斐がありましたよ。

その他にセリフがない本作における「演出方法」や「女性同士の恋」を描くことになった裏話について言及され、とても興味深く読みました。

そして何と、驚くべき真実が判明。それも3つ!読んだとき思わず「えっ!?」って声が出てしまうくらいに驚くべき真実です。詳細はここには書きませんが、ヒントとして「ゴンドラ」「ニニ・ソセリア(ニノ役)」「車椅子の男」とだけ書いておきましょうか。知りたい人はぜひパンフレットの購入を(笑)。

エッセイ/野中モモ(ライター・翻訳者)

「現実を生きるための魔法的クィア・ロマンス」と題した野中モモ氏のエッセイ。

ジョージアが実は「映画大国」だったというジョージアの映画事情や、古いジェンダー観が残っているジョージアの社会情勢など、僕が知らないことばかりが書いてあり、とても勉強になりました。(「家族の価値と未成年保護に関する法律」と名付けられたLGBTに関する法案によって、表現の自由が脅かされる可能性があるらしいです。)

ジョージアの文化的背景を少しでも知ることができて、野中氏のエッセイはとても良い学びになりましたよ。

コラム/ISO(ライター)

「どんな解釈も排除されない。自由な発想を讃える『ゴンドラ』の真髄」と題したISO氏コラム。映画パンフレットでお馴染み(?)のISO氏のコラムは相変わらずフェアな文章で読みやすいです。

ファイト・ヘルマー監督に関することと本作についての解説が半分、野中モモ氏のエッセイでも触れられていたジョージアの社会情勢についての言及が半分、といった感じ。

ジョージアの表現の自由を脅かす社会情勢についてはファイト・ヘルマー監督も少し言及されていたし、野中モモ氏はガッツリと言及されていて、そしてISO氏までも言及しています。ISO氏らが同性愛に不寛容なジョージアの政治的動向をいかに憂慮しているのかがわかります。

ジョージアの国立舞踊団を舞台に同性愛を描いた『ダンサー そして私たちは踊った』(レヴァン・アキン監督 2019年)が上映された際、大規模な反対運動が起こったという前例があるだけに、映画好きとしてはジョージアの今後が気になるところです。

総評

シンプルだけど可愛らしいデザイン。本作の素朴な雰囲気がよく表現されています。

なぜゴンドラなのか、なぜセリフなしなのか等、本作に関することはもちろんのこと、実際にゴンドラがあるジョージアのジェンダー観や社会情勢を知ることができて、とても学びの多い内容が掲載されてます。読みごたえありますよ。

そして何より、ミニシアター系の作品の場合、パンフレットが制作されないことがあるので、パンフレットを制作してくれただけでも嬉しいです。感謝。

レンツ
レンツ

これが800円(税込)で購入できるとは!買って損なし!

本作『ゴンドラ』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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