人気アニメ「クレヨンしんちゃん」のシリーズ初の3DCGアニメーション作品『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』のパンフレットを紹介します!
「クレヨンしんちゃん」のハチャメチャ感とは相反して(?)綺麗にデザインされた読みやすいパンフレット。萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
小林由美子さん(しんのすけの声)をはじめとするレギュラー声優の方々や、松坂桃李さんをはじめとするゲスト声優の方々のインタビューやコメントが充実。声優さんたちの座談会や制作スタッフさんたちの座談会といった変化球があったり、本編の写真が多く掲載されていたり、全体的に楽しい雰囲気のパンフレットになってますよ。
では、『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE』パンフレットレビュー
シンプルで可愛らしい表紙デザイン
ややオレンジがかった黄色のバックに精悍な顔つきをした3DCGのしんちゃんというシンプルな表紙。
裏表紙には、お尻にパワーがみなぎるしんちゃん(笑)。
シリーズ初の3DCGアニメーションということなので、3DCG化したキャラクターたちをドーンと表紙全面にのせたくなっちゃいそうなものですけど、あえてしんちゃんひとりだけを配置したという引き算のデザインの素晴らしさよ。シンプルだけど非常に力強いデザインになっています。
精悍なしんちゃん、ヒーローなしんちゃん。本作の内容を考えると、このデザインが正解ですよね。
背表紙にもタイトルが。細かいところにも手抜きなし。
本作のロゴタイトルが表紙の折り目部分に近すぎるような気がしますが、ご愛嬌ということで。
読みやすく綺麗に仕上げられた中面デザイン
表紙と同じく黄色をベースにしたデザインです。
「クレヨンしんちゃん」のハチャメチャ感とは違い、いい意味でおとなしいといいますか、シンプルなデザインになっています。余白を効果的に使っていて、非常に読みやすくて綺麗にデザインされています。
そして、シンプルで綺麗なデザインではあるんですけど、本編の写真が多く掲載されているので「クレヨンしんちゃん」らしいにぎやかさは失われていないという、絶妙なデザインが良いです。
「クレヨンしんちゃん」のようなキャラクターの濃い作品の場合は、装飾をしたりいろんな色を使ったりなど、余計なデザインって不要なんですよね。そういった意味でも、個人的には上手にデザインされたパンフレットだと思いました。
充実のインタビュー&コメント
小林由美子さんと松坂桃李さんは見開きで(半分は画像だけど)、鬼頭明里さんと空気階段はそれぞれ1ページずつ掲載されています。
主人公・野原しんのすけの声を演じる小林由美子さんは、3DCGに対する戸惑いやいつもと違うしんのすけのこと、サンボマスターの主題歌への思い、よかったシーンなどなど、かなり幅広く語ってくれてます。
特に本作のしんのすけについて語られているところはですね、さすがです。具体的なシーンを例に出して、いつものしんのすけとの違いを語ってくれてるんですが、5年以上しんのすけの声を演じられているだけあって、説得力があるんですよね。
また、小林由美子さん自身のキャラクターが随所に出ていて(かなり明るい人なのかな?)、人柄のようなものが滲み出ていておもしろかったです。しんのすけのことを「2Dの権化」って言うんですよ。言葉のチョイス(笑)
しんのすけに負けじと小林由美子さんのキャラもなかなかおもしろそうだぞ、と感じられるインタビューでしたよ。
本作のラスボス(?)・非理谷 充の声を演じた松坂桃李さんは、声優の難しさや演じた非理谷というキャラクターへの思い、3DCGになったしんちゃんの感想、グッときたセリフなどなど、松坂桃李さんの本作に対する思いや考えが語られています。
ご本人も昔から「クレヨンしんちゃん」を見てきたそうで、見てきたからこその言葉があったり、「クレヨンしんちゃん」を通ってきた感が垣間見られるのも良かったです。
文章の雰囲気から読み取るに、松坂桃李さんの優しさ、柔らかさ、性格の良さみたいなものが感じられる素敵なインタビューでした。最近お子さまが生まれたそうで。素敵なお父さんになりそうですね(余計なお世話)。
そして、レギュラー声優陣のコメントが(ひとことですが)掲載されているのは嬉しかったです(総勢14名!)。真柴摩利さん(風間くんとシロの声)をはじめとするカスカベ防衛隊の声優の皆さんだけじゃなくて、同級生のチーターくん(大塚智子さん)や園長先生(森田順平さん)などの脇を固める声優さんたちまでコメントしてくれるなんて、貴重じゃないですか?(そうでもない?)
ちなみにデザインも素敵。このパンフレットの中でいちばん動きのあるページで、とても楽しく読めますよ。個人的にはこのパンフレットでいちばん好きなページです。
野原一家の座談会がおもしろい
メンバーは小林由美子さん(しんのすけ)、ならはしみきさん(みさえ)、森川智之さん(ひろし)、こおろぎさとみさん(ひまわり)の4人。野原一家大集合。この4人の座談会だなんて、そのシチュエーションを想像しただけでも萌えます。
かなりワチャワチャしてにぎやかな座談会になるかと思いきや(いや、ワチャワチャしたことろもありますが)、本作への思いや考えをシビアに語られていたりして、いい意味で裏切られました。
特に非理谷(声:松坂桃李)に関することが多かったです。僕は「クレヨンしんちゃん」の劇場版をすべて観てきたわけではないですが、非理谷のネガティブさや歪んだ感じはリアルで怖さもあり、かなり異質なキャラクターだと感じたのでね、声優の皆さんも非理谷に関してはいろいろと思うことがあるようです。
声優さんご本人が感じていることや、キャラクター自身が感じていることなど、違う視点で意見を語られたり、自分が演じるキャラクター以外のキャラクターのことを語られたりするのも新鮮でよかったです。
本作との距離をグッと近付けてくれる野原一家の楽しい座談会でした。
制作スタッフの座談会もおもしろい
本作は『シン・ゴジラ』や『STAND BY ME ドラえもん』などを手掛けたCGのプロフェッショナル集団・白組が手掛けているんですね。そのうちのメインスタッフ7名がいろいろ語ってくれています。
個人的にはこの座談会がパンフレットの中でいちばんおもしろかったです。制作現場で戦っていた方々の生の声なので、リアルな苦労話や苦労話などが語られるわけですよ。僕も一応デザイナーという職業を生業にしているので、モノづくりの大変さは痛いほどわかるのでね。心からの労いの言葉を送りたいです。
お疲れさまでした!そして素晴らしい3DCGをありがとう!
パイロット版(先行して試験的に作られたもの)の3DCGで大根仁監督にいきなりダメ出しされたり、絵コンテを描いては社内スタッフに見てもらい意見をもらってまた描いて…を繰り返したり、ラストのあるシーンを何度もやり直したり、とにかく根気強く作り上げたことがとてもわかるし、と同時に楽しみながら作っていたこともわかる内容で、めちゃくちゃ濃ゆい座談会でほんとにおもしろかったです。
3DCGに関しては、もっと本格的な3DCGを期待していたので、個人的には物足りなさを感じていたんですが、大根仁監督の指示によってこのような3DCG(ちょっと漫画チックな感じ)になったんだとわかったので、納得。
もちろん苦労話だけではなくて、いろんなシーンに対するこだわりや思いとか、勉強になったこととかも語られています。
座談会は明るく楽しく書かれていますけど、制作現場では大根仁監督とは良い意味でバチバチだったのかなぁなんて、行間を読むと感じたり感じなかったり。まぁ、一流のクリエイター同士ですもの。そりゃあ、やりあうでしょ。
座談会は4ページにもわたって掲載されています。かなり読みごたえがあります。制作スタッフ、それも一流クリエイターの座談会なんてなかなか読む機会がないので、貴重だと思いますよ。
興味深い岩崎太整さん(音楽担当)のインタビュー
かなり実績のある音楽家の方だと知ってまずびっくり(僕は存じ上げませんでした…すみません)。そして、本作の音楽の秘密を知ってまたびっくり。実におもしろいアイデア。
しんのすけのシーンと非理谷のシーンでは、使う楽器を変えていただなんて!もちろん詳しくはここでは書きませんが、この秘密を知ったからには本作をもう一度観て、聴きたいと思いました。
大根仁監督とのやりとりは大変そうでおもしろかったです。大根仁監督には常に正解があって、ただそれは感覚的なものらしく、そこに合わせていくのが難しかったみたいです。
他の方のインタビューでも大根仁監督の名前がちょこちょこ挙がってくるので、癖のある監督なのかな?とか思ったり。いや、監督という人は多かれ少なかれ癖のある人種なのかもしれないですね。
最後に。岩崎太整さんの実績を。すごい方なんですよ。映画『モテキ』で第35回日本アカデミー賞 優秀音楽賞を受賞。映画『竜とそばかすの姫』で第45回日本アカデミー賞 最優秀音楽賞を受賞。映画『竜とそばかすの姫』で第36回日本ゴールドディスク大賞 サウンドトラックアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。ちょっと、凄すぎません?本作の劇伴、本気です(当たり前)。ちなみにNetflixの『全裸監督』の音楽も担当していたようで、ふり幅の大きさよ(笑)
バラエティに富んだオリジナルページ
本編のヴィジュアル(キャラクターや背景)に関する3DCGの制作過程が紹介されていたり、本作の原案となった漫画や、エンディングで使用された漫画も掲載されています。
3DCG制作に関してはあまり深掘りはされてないんですけど、このようなページがあるのは嬉しいし、パンフレットの価値のようなものを上げていると思います。
エンディングで使用された漫画に関しては、エンディングディレクターである上田大樹さんのインタビューが掲載されています(エンディングディレクターという肩書きは初めて聞いた)。「クレヨンしんちゃん」らしいエンディングはとてもよかったので、パンフレットであらためてその漫画を見られるのはうれしいところ(少し小さくて読みづらいけどそれは仕方のないところ)。
コラムは1本。大根仁監督やキャストに触れられていたり、現在の情勢と本作の物語の関連性が語られていたり、兵庫慎司さんのコラムはとてもわかりやすくて読みやすかったですよ。
大根仁監督のインタビューは読みたかった
小林由美子さんのインタビューとか座談会などで、大根仁監督の名前がちょこちょこ挙がってくるんですけど、当の本人のインタビューが無いというのは、個人的にはとても残念。
大根仁監督のインタビューは読みたかった!
プロデューサーである吉田有希さんのインタビューがあるとはいえ(それはそれでおもしろかったけど)、パンフレットにはやはり監督インタビューは必須のような気がします。誤解を恐れずに書くと、映画って監督のものだと思うんですよね。だからこそですよ。
3DCGのこと、いつもと違う感じのしんのすけのこと、非理谷のことなどなど、監督本人に語って欲しいことがいっぱいあったのにな。監督の本作に対する熱い思いを知りたかったのにな。っていうか、そもそも監督のインタビューが掲載されてないパンフレットってあるんですかね。
何か大人の事情でもあったのかしら。
総評
シンプルで非常に読みやすく、安心感のあるデザイン。インタビューやコメントが多いし、座談会という変化球や本作の原案となった漫画の掲載等、オリジナリティのあるページも多く、全体的にそつがない内容。これが880円(税込)で購入できるなんて!
デザイン、内容ともに非常に完成度が高いパンフレット。
買って損はありませんよ!
「クレヨンしんちゃん」が好きな方、3DCGに興味がある方には(だって白組さんの座談会が掲載されているんだもの)ドンピシャなパンフレットだと思います。
本作『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』を気に入ったそこのあなた、オススメいたしますよ。