関東大震災後の東京を舞台に、戦う宿命を背負った美しきダークヒロイン・小曾根百合の活躍を描いたアクションエンターテインメント作品『リボルバー・リリー』のパンフレットを紹介します!
レトロな雰囲気がめちゃくちゃかっこいいパンフレット。萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
キャストインタビュー&コメント、監督や原作者のインタビュー、クリエイターインタビューなど、インタビューがかなり充実。登場人物の相関図やROAD MAPというオリジナリティがあるページに3本のコラム。デザインも内容も満足できる素敵なパンフレットですよ。
では、『リボルバー・リリー』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
レトロな雰囲気の表紙デザイン
赤とオレンジの中間くらいの朱色をベースに、中央に「REVOLVER LILY」のタイトルとユリの絵。その周りには黒で描かれたユリの葉をモチーフにした絵柄。そして、中央のユリの花とその周りの罫線、「REVOLVER LILY」のアルファベット「O」の真ん中にある「+」(銃の照準をモチーフ?)と「I」「Y」の文字は銀の箔押しという芸の細かさ。
本作の時代設定を投影したかのような大正ロマンを思わせるレトロなデザイン。オシャレで素敵です。
ちなみに裏面も素敵。
行定勲監督と原作者の長浦京さんの名前をローマ字で入れるというセンスの良さ(レトロな書体も良い!)。そして中央のユリの花も雰囲気が良いです。
余談ですが、僕は本作『リボルバー・リリー』を鑑賞しようかしまいか悩んでいたんですが、この表紙のかっこよさオシャレさにひかれて「このパンフレット、欲しい!」と強く思い鑑賞を決意したという、パンフレット欲しさに映画を鑑賞した珍しいパターンだったんですね(まぁ、どうでもいいか)。それくらい表紙に惚れ込んでしまいました。
そして、表紙だけではなく中面のデザインも良かったので言うことなし。
『リボルバー・リリー』の世界観を表現した中面デザイン
表紙同様に中面も全体的に大正ロマンを思わせるようなデザインで素敵。『リボルバー・リリー』の世界観を見事に表現しています。
まずは全体的な配色や色味がいいんですよね。赤っぽい色味でも青っぽい色味でも、少しだけ黒を入れて(5%くらいかな?)微妙に濁らせてるんです。それがとてもレトロな感じでグッド。暗すぎず明るすぎず、といった感じで、色味のさじ加減が絶妙なんですよね。
使われてる書体は、ちょっと古い感じがする雰囲気の良い書体で、レトロ感を増長させてます。大きめの文字にはかすれた書体を使っているのも良いです(書体ではなく、もしかしたら文字を加工させているのかもしれません)。
レトロ感たっぷりのユリのイラストが所々で挿し込まれていたり、罫線が少しかすれていたり、かなり細かいところにまでこだわってデザインされた中面。この素敵な中面のデザインを見て、パンフレットを買ってよかったなと、あらためて思いました。
その中で「ROAD MAP 百合と慎太の足取り」という見開きのページがあるんですけど、これが素晴らしい出来映え。百合と慎太の足取り(そのまま 笑)がよく整理されているし、赤と黒(グレー)をベースにしたデザインがシンプルでかっこよくて。
二人が訪れた場所の説明だけではなくそのシーンの写真も掲載されているし、さらにロケ地まで書かれているというオマケ付き。ポイント高いです。
このページがパンフレットのいいアクセントになっています。僕のおすすめページです。
ピックアップコンテンツ
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
充実のキャストインタビュー
主演の綾瀬はるかさんは4ページ、長谷川博己さんは見開き2ページ、羽村仁成さん(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)は1ページ、ジェシーさん(SixTONES)が1ページ、そしてシシド・カフカさんをはじめとする脇を固めたキャストの皆さんのコメントが4ページにわたって掲載されています。全12ページ。
まずは綾瀬はるかさんのインタビュー。誠実に受け答えされていますが、ちょこっと天然が顔を出すあたりが綾瀬はるかさんらしくておもしろかったです。
ストレートな言葉選びでちょこっと天然が顔を出す綾瀬はるかさんらしいインタビューですよ。
綾瀬はるかさんご本人が演じた小曾根百合の心情であったり、印象に残ったシーンであったり、映画の内容的なところを中心に語られていますが、個人的に興味深かったのはアクションに関するところです。
美しいドレスを着てのアクション、そしてガンアクション。大変だったようです。
観客である僕たちは、美しいドレスを着た綾瀬はるかさん華麗なアクションを見て「きれい!」とか「かっこいい!」とかビジュアル的な感想を持つと思うんですけど、演者さんは大変。
今回のようなドレスを着てのアクションって、肌が剥き出しなんですよね。実はそれだけ怪我をする可能性が高いわけで。だからこそ怪我をしない動きを模索するという陰の努力があるんですよね。これって案外盲点のような気がします。露出の多い衣裳を着てアクションをするには、ひと手間ふた手間かかるんでしょうね。それを乗り越えた上でのあの華麗なアクションシーン。ノー天気に「きれい!」「かっこいい!」って言ってる場合じゃないですよね(ノー天気には言ってないか 笑)。
アクションの裏側を語る綾瀬はるかさんのインタビューを読んで、アクションの見方が変わりそうです。薄着でアクションされる俳優さんはかなり練習されてるってことですよね。(V6の岡田准一さんなんかたまにタンクトップ着てアクションやってませんか?相当すごい練習をされてるんでしょうね。)
ちなみに綾瀬はるかさん、ガンアクションのためにモデルガンを家に持ち帰って練習したそうです。役者魂ってやつですかね。根性入ってるなといった感じ。
でもインタビューを読んでいると、頑張っている感じがしないというか、やって当然のように思ってるような、そんな節さえ感じられます。努力を努力と思ってないんでしょうね。綾瀬はるかさんの凄みを感じました。
ちなみに続編があったら次は観る側に回りたいそうです。撮影がいろいろと過酷だったんでしょうね(笑)。そんな正直なところも綾瀬はるかさんの魅力(笑)。僕は綾瀬はるかさん主演で続編を観たいですけど。
長谷川博己さんのインタビュー。長谷川博己さんが演じられた岩見という人物について語られていますが、頭の良い俳優さんだなぁと思いました。
原作では岩見の背景が描かれてるようなんですが、本作では描かれていないので、行定勲監督と一緒に岩見像を膨らませていったそうです。でも岩見というキャラクターを決定づけたのは、長谷川博己さんが考えた演技プランだったようで。監督に言われたままに演じるのではなく、自分でも考えた演技した結果「これだ!」って監督に言わせるなんてすごいことですよね。
ちなみに原作者の長浦京さんは、原作の岩見より本作の岩見の方がかっこいいと感じたらしいです。原作者にそう言ってもらえるなんて役者冥利に尽きますよね。まぁ、長谷川博己さんが演じれば基本的にかっこよくなりますけどね。
長谷川博己さんの聡明さが垣間見られるインタビューでしたよ。
多くのキャストの方のコメントが掲載されてますが、そんな中、石橋蓮司さんのコメントはさすがだなと思いました。
多くのキャストの方は本作に関することや演じたキャラクターに関することをコメントしているんですけど(それがダメだとは言ってませんよ)、石橋蓮司さんはひと味違うんですよ。ご自身が演じた筒井国松の「自己犠牲を美徳とした時代を生きた人物を見た若者たちの反応が気になる」というようなコメントなんです。深い、深すぎる。「映画とは観客と対話するもの」とも語られていて、なんて含蓄のある言葉なんだと思いました。数行のコメントなんですけど、感銘を受けてしまいました。
全12ページにわたるキャストインタビュー&コメント。慎太を演じた羽村仁成さんのインタビューは初々しかったし、津山を演じたジェシーさんのインタビューは明るく元気だったし(テレビで見るそのままのイメージ)、全体的にとても読み応えのあるキャストインタビュー&コメントでした。
行定勲監督インタビュー
本作を鑑賞した僕個人の感想として、リズム感やスピード感が足りなくて、やや冗長的に感じたんです。でも、行定勲監督のインタビューを読むと、登場人物の心情や時代背景を考えてあえて「間」を感じられるように作られたようで。僕なんかが言うのはおこがましいけど、よく考えられて撮られたんだなぁなんて感心しちゃいました。と同時に、作品を深く観られてない自分自身に反省。猛反省。
行定勲監督の作品に対する思いが伝わるインタビューです。読んで良かった!
行定勲監督ご自身が語られてましたが、いわゆる物量で迫るアクション映画は他の監督さんにに任せて、自分にしか撮れない自分らしいアクションを模索していたようです。侘び寂びという言葉を使ってましたが、なるほど、納得です。
行定勲監督の作品に対する思いみたいなものが感じられて、だからこそこのようなオリジナリティのあるアクション作品になったんだと思いました。
もちろん映画って好き嫌いがあるし合う合わないもある(僕も正直それほどでも…って思った)。でも行定勲監督のインタビューには説得力があるんですよね。行定勲監督の思いを踏まえてもう一度観てみようかなって思いました。自分の中での評価が変わるような気がしますよ。
情感のあるアクション映画。いいですね。時間が経てば経つほど評価される作品になりそうな気がしないでもない。
他には綾瀬はるかさんをはじめとするキャストへの評価であったり、戦争についてだったり(撮影の準備中にウクライナ戦争がはじまった)、行定勲監督の思いや考えがわかるインタビューでした。
長浦京インタビュー
原作者である長浦京さんが語る映画の感想が実にユニークでおもしろかったです。かなり満足されているようですよ。
原作は656ページもあるそうで!原作ありきの作品、それも長編って難しいと思うんですよね。物語を端折りすぎたら伝わらないし、詰め込みすぎたらごちゃついて物語が進まないし。長浦さんが語られてましたが、物語のまとめ方が素晴らしかったようです。原作者が満足してるんだから正解だったんでしょうね。
大正時代を物語の舞台に選んだ理由であったり、本作で描かれた死生観であったり(ご本人が大病を患ったことがあるらしいので妙に説得力があった)、かなり深いことまで語られていています。原作者が原作を語るってなんて贅沢。
気になる続編のことも語られてますが、どうでしょう。ご本人は出し尽くしたようですが、まんざらでもなさそう。続編、あるんじゃないでしょうかね。幣原機関での同胞たちが百合の前に現れて…みたいな韓国映画『THE WITCH』のような展開はどうでしょう。
平田真人さん、相田冬ニさんのコラム
平田真人さんは「アクション女優としての綾瀬はるかの真価」というタイトルで、相田冬ニさんは「女性映画としての行定勲の歩み」というタイトルでそれぞれコラムを執筆されてます。
平田さんは、綾瀬はるかさんの過去のアクション作品『ICHI』(08)、「精霊の守り人」シリーズ(16~18/NHK)、「奥様は、取り扱い注意」(17/日本テレビ)、劇場版『奥様は、取り扱い注意』(21)、そして本作『リボルバー・リリー』を時系列で綾瀬はるかさんのアクションを中心に解説してくれています。
綾瀬はるかさんのアクションセンスがわかるエピソードやそれぞれの作品における印象的なアクションシーンなども書かれていて、「アクション女優・綾瀬はるか」の入門編的なコラムになっています。
持ち前のセンスに加えてアクション女優としての経験値が積み重なっての本作ですからね。まさに本作はアクション女優・綾瀬はるかさんの集大成的な作品。「アクション女優=綾瀬はるか」として認知される日も近いように感じました(というかもう認知されてるかな?)。
平田さんは綾瀬はるかさんにフォーカスしてコラムを展開されてましたが、相田冬ニさんは行定勲監督にフォーカス。行定勲監督の過去作を紹介しながら、行定作品における女性描写を解説しています。
キーワードは母性。行定勲監督が明確に「母性」を描いたのは本作がはじめてではないかと、この相田さんのコラムで書かれています。実は綾瀬はるかさんのインタビューでも「母性」という言葉が出てきました。なるほど、確かにあるシーンをきっかけに百合から母性が感じられるようになったような。そう、あのシーンから。
僕はまったく母性という観点で本作品を観てなかったので、着眼点に感心してしまいました。と同時に、僕は映画の本質のようなものを捉えられてないんだなと、反省しちゃいました(また反省)。表層的な部分しか見られてないんだなと。
映画って人それぞれに解釈が違いますが、相田さんのコラムを読んでちょっと勉強になりました。そして行定勲監督の過去作も観たくなりました。今後の行定勲監督の女性描写に注目したいですね。
作品の裏側がわかるCREATER’S VOICE
「CREATER’S VOICE」というくくりで展開されたクリエイターさんたちのインタビューページ。めちゃくちゃいいです。おもしろいです。
それぞれの持ち場でディテールにこだわって全力を尽くしたクリエイターの皆さんをリスペクトです!
ACTION(アクション)、GUN、COSTUME(衣裳)、HAIR & MAKE UP、PRODUCTION DESIGN(美術)、VFX、MUSICという7つのカテゴリーに分けて、それぞれのクリエイターさんたちのインタビューが10ページにわたって掲載されてます。
ACTION(アクション)に関しては、アクションや殺陣を考案するアクションコーディネーターの田渕景也さん、安全に気を配ったり小道具の用意など現場全体を管理するスタントコーディネーターの遊木康剛さん、綾瀬はるかさんのスタントを担当した大槻響さんの3人がインタビューに答えてくださってます。実に大変さがわかるインタビューでした。
練習期間はなんと1ヶ月弱!長い!と僕は感じますが、それでもギリギリ間に合ったという印象をインタビューから受けましたよ。
行定勲監督からいろいろな要求があったようです。監督からお題を出されて、それに見合うアクションを作り上げるというホントにクリエイティブなお仕事なんですね。視界不良の霧の中でのアクション、1000人対百合ひとりという無謀ともいえるアクション(これはホントに無謀)。俳優の皆さんに怪我をさせないよう、そしてアクションとして成立させるって至難の業ですよね。やり遂げたアクションクリエイターの皆さんに拍手!
GUN(銃)に関しては、ガンアクションアドバイザーの武藤竜馬さんがインタビューに答えてくれて、ガンエフェクトの納富貴久男さんが銃を解説してくれてます。
撮影中もガンアクションのトレーニングは続けていたそうで、特に綾瀬はるかさんのプロ根性が垣間見られるエピソードはもうね、頭が下がります。
そして、S&W M1917 リボルバーをはじめとする本作に登場した銃(8種類)が写真付きで解説されています。知らない言葉も出てきてですね、なかなかのマニアックページです。銃マニアの方は必読ですよ。
ちなみに高名な彫刻師の方に無理を言って半ダースのS&W M1917 リボルバーを準備してもらったそうですよ。いろんな方々が関わって映画って作られていくんですね。
VFXに関しては、シニアVFXスーパーバイザーの尾上克郎さんがインタビューに答えてくれてます。
実はかなりのシーンでVFXが使われているそうで。印象的なボートでのシーンもVFXが使われているみたいです。まったくわからなかった…。
「どんなソフトorハードが使用されてますか」という質問がマニアックでおもしろかったです。この質問を考えた方はかなりVFXに興味がある方なんでしょうね(笑)。
何着も衣裳を用意しないといけなかった衣裳担当の黒澤和子デザインチームのインタビューや、大正時代の建造物がほとんど残ってないので苦労した美術担当の清水剛さんのインタビューなどなど、他にも興味深いことが盛りだくさんに語られていて、もうね、「CREATER’S VOICE」は必読中の必読ページです。
キャストのインタビューやコメントが読めるのは確かに嬉しいけど、キャストインタビューって実は他の媒体でも読めたりするんですよね。でも、作品を陰で支えたクリエイターの方々のインタビューやコメントが読めるのってパンフレットくらいしかないと思うんです。
このようなページがあるからこそパンフレットの意味、存在意義があるような気が個人的にはします。
誤植の多さは残念
パンフレット開くとまず目に飛び込んでくるのは1枚のペラ紙(笑)。パンフレット誤表記のお詫びと訂正のお知らせ。全部で8か所。ちょっと多いですね…。それなりのお金を出してパンフレットを購入しているので、その辺はプロとしてしっかりと仕事を全うして欲しいところです。
と、言いたいところですが!
何を隠そう私も紙媒体を中心にしたデザイナー。おそらく時間のない中、皆さんが全力で取り組んだけどミスってしまったのでしょう。
もちろんミスはよくないけど、僕個人としては責められない。責められないんだよ…。まぁでも、次は少しでもミスを防いで素敵なパンフレットを制作していただきたいですね。
ミスは誰にでもあること。次は期待してますよ!
総評
本作の時代背景を投影したかのようなレトロ風なデザイン。キャストや監督、クリエイターのインタビュー等の充実した内容。とても満足度の高いパンフレットです。演じ手、創り手の両方からの様々な情報が掲載されています。理想的な映画パンフレットだと思いますよ。これが1,100円(税込)で購入できるなんて!
映画パンフレットの醍醐味が味わえます。買って損はありませんよ!
『リボルバー・リリー』がおもしろかった方、綾瀬はるかさんが好きな方、レトロな世界観が好きな方にはドンピシャなパンフレットです。
本作『リボルバー・リリー』を気に入ったそこのあなた、オススメいたしますよ。