映画パンフレットレビュー。山崎貴監督作品!神木隆之介主演!『ゴジラ -1.0(マイナスワン)』

邦画

日本を代表する怪獣・ゴジラ作品を、VFXの名手・山崎貴監督が神木隆之介を主演に迎えて映画化した作品『ゴジラ -1.0(マイナスワン)』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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『ゴジラ -1.0(マイナスワン)』の世界観が表現された素敵なパンフレット。萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:225mm × 300mm
  • ページ数:56ページ(観音開きページ含む)
  • 発行者:大田圭二
  • 発行所:東宝株式会社ライツ事業部
  • 編集:株式会社東宝ステラ
  • デザイン:神崎茜(TOHOマーケティング株式会社)
  • 取材&文:金澤誠
  • 印刷所:成旺印刷株式会社
  • 定価:1100円(税込)
パンフレット掲載内容
  • STORY
  • キャストインタビュー
  • キャストコメント
  • 山崎貴監督インタビュー1
  • 『ゴジラ』映画史
  • ゴジラ造形の歴史
  • ゴジラ襲来ポイント
  • 山崎貴監督インタビュー2
  • 山崎監督によるゴジラデザイン画
  • プロダクション・ノート
  • 渋谷紀世子(VFXディレクター)インタビュー
  • VFX MAKING
  • 佐藤直紀(音楽)インタビュー
  • スタッフプロフィール

神木隆之介さん、浜辺美波さんをはじめとするキャストインタビュー、山崎貴監督インタビュー、ゴジラ映画の歴史を振り返る「ゴジラ映画史」、渋谷紀世子さん(VFXディレクター)のインタビューなどなど、充実した内容。本作の舞台となった戦後のスモーキーで骨太な雰囲気が表現されているデザイン。いい感じのパンフレットですよ!

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では、『ゴジラ -1.0(マイナスワン)』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

本作『ゴジラ -1.0(マイナスワン)』のティザービジュアルがそのまま表紙になったデザイン。ちょっと面白味に欠けるなぁなんて思ってましたがなんと!絵柄全体がエンボス加工されているという大胆さに拍手(買って触ってはじめて気付いた)。エンボス加工された絵柄の面積的が大きいので、それなりにお金がかかったんじゃないでしょうかね。余計なお世話だけど。

裏表紙は全面マットなブラックの上にロゴのような絵柄がセンターに配置されています。ゴジラ生誕70周年の70の数字の中央にゴジラのシルエットが抜かれていて、その数字がひび割れてるという凝ったデザイン(エンボス加工もされてます)。いいですねぇ、このロゴ。

ちなみに全面がマットなブラックなので、手垢と言いますか手油といいますか、触った跡が残りやすいの要注意。

中面デザイン

本作の舞台である戦後を意識したのか、スモーキーかつ骨太な雰囲気で、全体的に色味を抑えた派手さのないデザインです。

写真以外ではほとんどスミ(黒)文字が使われてます。要所要所で白抜き文字が使われていて、それがアクセントになってる感じですね。シンプルなんですけど飽きがこないデザインとなってます。

このパンフレットの大きな特徴は、ちょうど真ん中にある観音開きページ(ちなみに観音開きとは、中央から左右対称に開く両開きの戸のことで、お仏壇とかでよく見かける様式)。「ゴジラ映画史」というゴジラ映画の歴史を振り返る特集を観音開きで展開したというページデザインが素晴らしいです。観音開きって特別感が出ますからね。このようなひと工夫のあるページデザインは個人的には大好きです。

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横書きと縦書きを組み合わせたインタビューページの斬新なデザインもイイ!

インタビューページのデザインにもひと工夫が。インタビューページってパンフレットに限らず雑誌とかでも、基本的には文章はすべて横書き(あるいは縦書き)で展開されるんですけど、このパンフレットのインタビューページは横書きと縦書きを組み合わせてデザインされてるんです。ある質問は横書き、ある質問は縦書き、というように質問ごとにブロックを作って配置されているので、読んでいて飽きがこないんですよね。いやぁ、デザイナーさん、上手です。

派手さはないものの、ページ展開やデザインに工夫が感じられるし、本作の世界観も損なわれていないので、全体的にデザインのクオリティが高いパンフレットだと思いました。

ピックアップコンテンツ

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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

充実のキャストインタビュー

主演の神木隆之介さんとヒロインの浜辺美波さんはもちろんのこと、山田裕貴さん、青木崇高さん、吉岡秀隆さん、安藤サクラさん、佐々木蔵之介さんと、主要キャストの皆さんのインタビューがしっかりと掲載されているのが嬉しいです。(飯田基祐さんと田中美央さんのコメントが掲載されているのも嬉しい!でも遠藤雄弥さんのコメントが無いのは残念!)

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それぞれご自身が演じたキャラクターについてだけじゃなく、ゴジラ(映画)に対する思い入れだったり撮影中のエピソードなども語られていて、おもしろいキャストインタビューになってますよ。

どのインタビューも読み応えがあったんですけど、やっぱり神木隆之介さんのインタビューは特に読み応えがありました。

神木隆之介さんは主演のプレッシャーをかなり感じていたようです。まぁ、そりゃそうですよね。ゴジラ生誕70周年で30作品目(日本版・実写映画)という節目の作品の主演ですからね。さらに本作は海外での上映が決まっていたようなので、プレッシャーはハンパなかったことは想像に難くないです。

そのプレッシャーに打ち勝つための役づくりがこれまたストイック。笑ってはいけないけど、ここまでするか?みたいなところもあって、神木隆之介さんの凄みを感じましたよ。(詳しくはパンフを買って読んでね。)

神木隆之介さんが演じた敷島自身の感情や典子(浜辺美波)への複雑な思いが語られていて、なんかグッときてしまいました。人間ドラマとしても良かったなぁ…なんてしみじみしちゃいましたよ。

神木隆之介さんのインタビューの他には、浜辺美波さん(本作の名シーン「電車ぶら下がり」シーンの裏話)や山田裕貴さん(オーディションのエピソード)や青木崇高さん(青木さんが演じた橘の複雑な感情)のインタビューが個人的には印象的でした。

そして、安藤サクラさん。本作でも相変わらずの存在感でしたが、本作にオファーをされた当時のご自身の私生活の状況とか山崎貴監督との出会いとか、パンフレットを読まなきゃ知り得ないことまで語ってくれてます(パンフ読みにとってはとても嬉しい!)。ちなみに安藤サクラさん、長野県での『怪物』の撮影の合間に本作の「巨大生物對策説明会」シーンを見学に行ったらしいですよ(笑)。ということは、この2作品の撮影時期はかぶってたんですね。多忙!

そして、名バイプレイヤーの飯田基祐さんにいたっては、ご自身が演じた板垣が勤める会社「東洋バルーン」のロゴがカッコいいとか語られていてですね、デザイナーを職業としている僕としては、こういったロゴにまで言及されているなんて個人的にはちょっと嬉しいです。映画に登場する企業のロゴマークだったり制服だったり、登場する全てのものはオリジナルでデザインされているわけですからね。こういうところにも注目してくれるのはデザイナー冥利に尽きるというものです。

そうそう、何人かのキャストの方が「船酔い事件」について語られていたのはおもしろかったです。かなり過酷でインパクトがあった撮影現場だったんでしょうね。神木隆之介さんは倒れるわけにはいかないと根性をみせたらしいですけど、隣を見やると山崎貴監督がダウンしていたというね(笑)。ゴジラ映画だと、どうしてもCGとかVFXに目が行きがちですけど、体を張った撮影もあるんですよね。キャスト、スタッフ、として監督に拍手!

インタビューを読むと、言わずもがなですが、神木隆之介さんだけではなく他のキャストの皆さんも演じた役に真摯に向き合っているのがわかるし、それぞれのキャラが深掘りされているので、より作品の理解度が深まるんですよね。キャストの1人2人しかインタビューが掲載されてないパンフレットがたまにあったりするんですけど、作品を理解する上ではやっぱり物足りないんですよね。そういった意味でも、質・量ともに満足できるキャストインタビューでした。

山崎貴監督インタビュー

第一部では、ゴジラ映画をオファーされた時の感想や山崎貴監督が最初に観たゴジラ映画だとか、山崎貴監督ご自身のことから、本作の時代設定やキャラクター設定などの作品に関わることを、そして第二部では主にゴジラ自体のデザインに関することを語ってくれてます。

レンツ
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めちゃくちゃ読み応えありますよ!山崎貴監督のインタビューは必読!

まず、個人的に興味深かったのは、戦後という時代設定を選択した理由。このコロナ禍が理由のひとつのようで(政府が機能していないから自分たちで何とかするしかない、という意識を国民が持ったというところ)、とても納得感がありました。コロナ禍の混沌と戦後の混沌をリンクさせるなんて、すごい発想です。『シン・ゴジラ』は国vsゴジラという図式だったけど、本作は民間人vsゴジラという図式。『シン・ゴジラ』との差別化ができたという点でもよかったんじゃないですかね。

他にも敷島と典子のキャラクターについてや、本作に神木隆之介さんと浜辺美波さんをキャスティングした理由など、興味深い話はいろいろありましたが(詳しくは買って読んでね)、個人的に読んでいていちばんおもしろかったのは、第二部で語られたゴジラの目のデザインに関するエピソード。

山崎貴監督は半月形の「ゴジラ目」にしたかったらしいんですね。でも、何回オーダーしてもモデリングアーティストの田口工亮さんがゴジラの目を半月形ではなく人間みたいな目にしてきたんですって。そうしたらその目が段々怖い目に思えてきたらしく田口さんのこだわりを採用した、という裏話がおもしろかったです。山崎貴監督は「田口くん」と呼んでるので、山崎貴監督(59歳)より年下なのは間違い無いですが、監督の要望を無視して自分のこだわりを貫く胆力は凄いです(笑)。今後大物になる可能性があるので覚えておきましょう。田口くんを。

山崎貴監督のインタビューを読むと、当たり前のことではありますが、ホントによく考えられて、練られて作られた作品なんだなぁって思いました。個人的には『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の後遺症で、山崎貴監督を信じきれてない自分がいたんですけど、本作を観て、そしてこのインタビューを読んで、これからは信じてみようかなぁなんて思ったりしました(どの口がいってんだよ)。

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ホントに、どの口が言ってんだよ…

『ゴジラ』映画史

パンフレットの真ん中に観音開きで特集されている『ゴジラ』映画史。間違いなくこのパンフレットの目玉コンテンツです。

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ゴジラの歴史がわかる特集ページ!これはイイ!

1作目の『ゴジラ』(1954年)から29作目の『シン・ゴジラ』(2016年)までの全作品がティザービジュアル(リーフレットかな?)と共に紹介されてます。

ちょっと脱線しますが、僕のゴジラ映画初体験は『ゴジラvsモスラ』なんですね。その『ゴジラvsモスラ』の情報も今さらながら知ることができて、なんだか嬉しかったです。ゴジラが負けちゃう(?)シーンが子どもながらに衝撃的だったんですよね。ちなみに別所哲也さんが主演だったらしいですよ。だからなんだって話なんですけど。まぁ、そんな昔の思い出を懐かしんだり、アーカイブとして楽しんだり、とても良い特集ページだと思います。

『ゴジラ』映画史の観音開きを広げると「ゴジラ造形の歴史」が4つにカテゴライズされて(昭和ゴジラシリーズ/平成・VSゴジラシリーズ/ミレニアムゴジラシリーズ/『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』)3ページにわたり掲載されていて、最後のページには「ゴジラ襲来ポイント」が掲載。ゴジラ襲来ポイントが地味におもしろいです。結構いろんな土地に襲来してるのね、ゴジラって。

ゴジラ映画ガチ勢にとっては物足りないのかもしれないけど、僕のようなゴジラ映画にそれほど詳しくない人にとっては十分な知識を得られる良きコンテンツだと思いますよ。

渋谷紀世子(VFXディレクター)インタビュー

渋谷紀世子さんのインタビューがこれまた濃ゆい内容でとてもおもしろかったです。

VFXディレクターの仕事内容や本作での印象的なシーンの制作過程などを説明してくれたり、とても興味深い内容でしたよ。

ざっくり書くと、市街戦より海洋戦の方が大変だとか(水の表現って難しいらしいです)、大変ではあるけど今はマシンのスペックの性能が上がっているので以前よりやりやすいとか(実にリアルな感想だと思う。マシンのスペックはクリエイターにとっては超大事)実際の作業的な話から、監督の絵コンテを元に実写で撮影するのかVFXで受け持つのか、撮影するにしてもロケーションなのかスタジオなのかを判断したりとか、ディレクターとしての仕事内容まで、いろんなことがめちゃくちゃリアルに語られていてですね、本作のような特撮系の制作の大変さがよくわかるし、めちゃくちゃリスペクトできます。

あとは、新生丸がゴジラに追いかけられるシーンや高雄にゴジラが乗り上げるシーン、そして銀座破壊のシーンなど、具体的なシーンに関しても語られています。製作の裏側を知ることができて何だか得した気分になりましたよ。

VFXディレクターって、完成のイメージを監督やスタッフたちと共有して、それを逆算して段取るわけですからね。想像力に長けてないとVFXディレクターになんかなれないですよ。責任重大だし、作品作りの肝になるポジション。そんな重要なポジションを任されたら、僕なんかプレッシャーに押し潰されちゃうかも。いや、押し潰される。

その渋谷さんのインタビューページの隣ページにVFXのメイキングが掲載されているんですね。このメイキングページを合わせて読むと理解度がアップするので、こういうページがあるのはありがたい。

そして、渋谷さんは過去に携わった作品の経験が本作にも役立ったということも語られていて、経験って大事なんだなぁなんてあらためて思いました。クリエイターの端くれとして、僕も今の仕事に真摯に向き合って経験値を高めようなんて真面目に思ったりしちゃったり。すごくいいインタビューでした。

ただひとつだけ残念な点が。渋谷さんが悪いわけではないんですけど、「プリビズ」って言葉が頻繁に出てくるんですよ。「プリビズ」ってわかりますか?専門用語を出すならその言葉の解説が欲しかったところ。ちなみにプリビズとはプリ・ビジュアリゼーションの略で、映像化された絵コンテのようなもので、カメラワークやVFXなどの編集を決めるための簡易的な映像のことらしいですよ(僕調べ)。

まぁ、細かいところですけど、専門用語は極力避けるか注釈を入れて欲しかったです。

ココが惜しかった!

抑えるべきところはしっかりと抑えているので、全体的には素晴らしいパンフレットだと思います。

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でも、惜しいところもあったんですよね…。

コラムが無かったのは残念でした。ゴジラ生誕70周年、30作目の節目の作品なのでね、コラムや解説は欲しかったです。ゴジラに詳しいライターさんとかいると思うんですけど、そういった方の客観的な意見や感想を読みたかったですよね。コラムや解説があると作品の理解度がだいぶ変わってきますよ。

あとは、キャストインタビューはとても充実してよかったけど、遠藤雄弥さんのコメントが無かったのは個人的には残念。序盤でセリフはひとつだけだったけど、敷島にかけた言葉は重要なセリフだったと思えたし、観客が作品に入り込めると言いますか、共感できるような役柄だったように思えたので、遠藤さんのコメントは欲しかったな。

総評

大胆にエンボス加工された表紙、本作の舞台となった戦後を意識したスモーキーで骨太な中面、なかなか素敵なデザインです。キャストインタビュー、山崎貴監督インタビュー、渋谷紀世子さん(VFXディレクター)のインタビューと、インタビュー記事はかなり充実。そして特集ページの「ゴジラ映画史」はゴジラ生誕70周年&通算30作品目という区切りとして素晴らしいコンテンツでしたよ。

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これが1100円(税込)で購入できるのはお安いんじゃないでしょうかね。

『ゴジラ −1.0(マイナスワン)』がおもしろかった方、ゴジラファンの方、山崎貴監督作品が好みの方にはオススメできるパンフレットです。

本作『ゴジラ −1.0(マイナスワン)』を気に入ったそこのあなた、オススメしますよ。

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映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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