2024年2月に劇場鑑賞した映画パンフレットをまとめて紹介します!
2月は6作品を劇場鑑賞しましたよ。
本当なら1冊1冊ちゃんと丁寧に紹介したいところですが貧乏暇なし。1冊のレビューに割ける時間が限られている現状を嘆きながら、各パンフレットの魅力を少しでも多く伝えていきたいと思います。
では、最後までお付き合いください。
いってみましょう!
2024年2月に購入した映画パンフレット
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
あらすじ
戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生・百合は、そこで出会った彰という青年に惹かれる。しかし、彼は特攻隊員だった…
では、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』のパンフレットを見ていきましょう!
パンフレットレビュー
デザイン
ユリの花を持った主人公2人(百合と彰)が背を向き合い空を見つめ立っている写真。その上に作品タイトルが白抜き文字で配置されています。ちょっぴり切なくて、意味深な感じがしますね。
裏表紙も百合と彰の写真。こちらは百合が彰の背中に寄り添ってる感じですが、百合の表情をみると、これまた切ない。
戦争に行って欲しくないけど戦争という事実(未来)は変えられないという、本作のやるせなさみたいなものが表現されている表紙(と裏表紙)で、グッとくるものがありますね。
中面はブルーグレー(水色にほんの少し黒を混ぜたような色)を基調にした爽やかなデザインは好感度高いです。
文字はやや小さめに感じるけど、行間がしっかり確保されているので読みやすいですよ。
余白もしっかり取られているし、レイアウトも整理整頓されています。デザインのクオリティがとても高いです。
インタビューページでは、質問部分の背景の色を濃くして白抜き文字にするというデザインが施されています。このさりげないデザインが良いんですよ。ページのアクセントにもなるし、質問が強調されるので読みやすくなるんですよね(見出し読みができる)。
表紙の写真や中面のスチール写真、そして色味など、全体的に優しい光に包まれているかのような、温かみのあるとても美しいパンフレットデザイン。戦争映画ではあるけど大前提としてはファンタジーなので、このファンタジックな雰囲気のデザインは大正解だと個人的には思います。
内容
キャストインタビューやコメントは充実してるし、監督インタビューはもちろんのこと原作者のインタビューまで掲載されてます。VFXや軍事指導に関することなど作品の裏側や、ペコペコ隊の手紙も掲載。もうね、内容的には満点です。
キャストインタビューで印象的だったのは水上恒司さん。ご自身が演じた彰のキャラクターについて言及されているんですが、これが実におもしろい。
思いもよらない発想が飛び出てきて、思わず感心しちゃいました。どんな発想だったかはもちろんここでは書きませんが(買って読んでね)、水上さん案が本当だったとしたら、これはこれで物語が広がっておもしろくなりそうな気がしましたよ。
あと、福原遥さんと水上恒司さんが挙げた印象的なシーンが同じだったのもおもしろかったです。戦争映画なのでね、ちょっとほっこりしたシーンが印象に残るんでしょうね。お二人が挙げたシーンは僕も好き。ああいうシーンがあるからこそ終盤の鶴屋食堂でのシリアスなシーンが生きてくるんですよね。
原作者・汐見夏衛さんのインタビューがあるのもよかったです。
最近、漫画原作のドラマ化で起きた悲劇があったので、原作者の声を読めるのはとてもありがたいです(原作者のコメントが無いパンフレットもあるんですよ)。
パンフレットに原作者のインタビューが掲載されてるってことは、本作を肯定的に受け取っているのは間違いないし、実際インタビューを読んでみても嬉しそうで、出来に満足しているのがわかります。
原作者と映画制作側の人間がお互いにリスペクトしていれば悲劇なんか起きないんです。そういった意味でも汐見夏衛さんのインタビューがあるのはホッとするというか、正しく実写映画化されたんだなと思いました。
他には撮影セットやVFXに関するページもおもしろかったです。鶴屋食堂のセットのこだわりに感心したし、かなりのシーンでVFXやCGを使っていたことに驚きました。僕たち観客が1945年をリアルに体感できるのは、美術さんらスタッフの頑張りのおかげなんですよね。リスペクトしかありません。
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の世界観が表現されたデザイン、そして内容は充実。買って損のないパンフレットです。
一月の声に歓びを刻め
まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
あらすじ
北海道・洞爺湖、伊豆諸島の八丈島、大阪・堂島を舞台にした3つのオムニバス。それぞれ心に傷を抱える3人の物語が交錯する…
では、『一月の声に歓びを刻め』のパンフレットを見ていきましょう!
パンフレットレビュー
デザイン
なんと言ってもまずは製本屋泣かせの凝った表紙デザイン。
製本がちょっとでもズレたらダサくなるリスクがあるけど、「声に」がしっかりと読めます。
製本屋さんお見事!
表紙の用紙サイズ(182mm×257mm:B5)と中面の用紙サイズ(148mm×208mm:A5変形)が違うし、表紙はボール紙くらいに厚いので曲がりにくいし、物理的に読みづらいのがやや難点。デザインとしてはおもしろいんですけどね。
中面は紺色と黒の2色。スチール写真が紺で文字が黒。
スチール写真はシンプルに角版(四角)ですが、ランダムに配置されていたり、スチール写真の上に文字が乗っていたりするので、紙面としては動きがあります。用紙のサイズは小さめですが、文字量は多いので、結構読みごたえがありますよ。
内容
5ページにも及ぶ三島有紀子監督のインタビュー、3つの物語の主演をつとめた前田敦子さん・カルーセル麻紀さん・哀川翔さんのインタビューがそれぞれ見開きで掲載。他にはレビューが1本と、著名な方々数名のコメントが掲載されてます。
前田敦子さんは三島監督や3つの物語に通して登場する「れいこ」のことを中心に、カルーセル麻紀さんは撮影の過酷さや三島監督への愚痴(笑)を中心に、哀川翔さんは作品全体のことを中心に、それぞれ語っています。
個人的にはカルーセル麻紀さんのインタビューはおもしろかったです。撮影がかなり過酷だったようで、愚痴ってる(軽い感じで)のがおもしろい。とてもキュートな方のように感じました。御年80歳。本作を見る限り、役者としてまだまだいけるんじゃないでしょうかね。
衝撃を受けたのは三島有紀子監督のインタビュー。本作は性被害に関する物語が描かれるわけですが(哀川翔さんパートはちょっと違うけど)、ブログのようなネットで記述すると永遠に残ってしまうので書きづらいけど、三島監督ご自身も幼少期に被害を受けたことがあるそうです。うーん、インタビューを読んでいてかなりキツかったです。そんな三島監督が本作を撮影したという覚悟、胆力には言葉がありませんよ。
本作で、前田敦子さんのパートだけなぜモノクロなのかなぁなんて、ちょっと疑問ではあったんですけど、その意味も語られています。
映画研究者で批評家の北村匡平さんのレビューはわかりやすくてよかったし、阪本順治監督ら著名な方々のコメントが読めるのもパンフレットでは珍しい感じがしてよかったです。
このパンフレットを読むと確実に本作に対する理解度がアップするし、あらためてもう一度観たくなります。
瞳をとじて
まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
あらすじ
映画監督のミゲルがメガホンをとる映画の撮影中に主演俳優が失踪をした。投身自殺だと断定されたがそれから22年後のある日、一通の思わぬ情報がテレビ番組に寄せられる…
では、『瞳をとじて』のパンフレットを見ていきましょう!
パンフレットレビュー
デザイン
A5サイズのコンパクトなパンフレット。水辺の風景にピンク色の文字で「Close Your Eyes」と「Victor Erice」。とてもシンプルな表紙デザイン。でもなんだか映画的で雰囲気があって素敵だと個人的には思います。
中面は基本的に書体は明朝体、スチール写真は角版で構成されてます。あまり文字に大小がついてないし、強めの色が使われてないので、全体的に落ち着いたデザインになってます。
パンフレット自体のコンパクトさと、中面で使われている薄いピンクや水色の配色が相まって、ポップとまでは言わないけど、可愛らしさがあります。
内容
ビクトル・エリセ監督の独白に近いコメントはあるものの、インタビューは無いし、キャストのインタビューもコメントも無し。作品のパンフレットとというより、ビクトル・エリセ監督のパンフレットといった内容。
ビクトル・エリセ監督の詳しいプロフィールやフィルモグラフィーがしっかりと掲載されているし、そして過去作である『ミツバチのささやき』と『エル・スール』に関するコラムが掲載されています。
まさにビクトル・エリセ祭り。
そしてこのパンフレット最大の目玉は、今をときめく日本を代表する監督3人の鼎談形式のインタビュー(なんと6ページにも渡って掲載!)。『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督、『LOVE LIFE』の深田晃司監督、『夜明けのすべて』の三宅唱監督。本作『瞳をとじて』とビクトル・エリセ監督のことを、この錚々たるメンバーが語っています。お三方のビクトル・エリセ愛が爆発しています。かなりマニアックな感じで愛おしい鼎談になってますよ。これが読めただけでも買った甲斐がありました。
細かいシーンについて解説するところがあり、映画を観るうえで勉強になったりもしましたよ。
内容的には物足りなさを感じたりはしたけど、小型でよくまとめられたパンフレットだと思います。個人的には小型のパンフレットは好みだし、シンプルなデザインも好きなので、買って良かったです。
夜明けのすべて
あらすじ
パニック障害を抱えている山添くんとPMS(月経前症候群)で悩んでいる藤沢さん。心や身体に悩みを抱えている2人は、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと考えるようになるが…
パンフレットレビュー
『夜明けのすべて』のパンフレットレビューはこちらからどうぞ。
落下の解剖学
あらすじ
人里離れた雪山の山荘で暮らす家族3人と愛犬1匹。ある日、山荘近くの雪の上で、視覚障がいを持つ少年が血を流して倒れている父親を発見したがすでに息絶えていた。事故か、自殺か、他殺か。死の真相はいかに…
パンフレットレビュー
『落下の解剖学』のパンフレットレビューはこちらからどうぞ。
ネクスト・ゴール・ウィンズ
まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
あらすじ
ワールドカップ予選史上最悪となる0対31の大敗を喫した米領サモアのサッカー代表チームに、型破りな性格のためアメリカを追われた鬼コーチが監督に就任し、チームの立て直しを図るが……。
では、『ネクスト・ゴール・ウィンズ』のパンフレットを見ていきましょう!
パンフレットレビュー
デザイン
安定安心のサーチライト・ピクチャーズのパンフレット。間違いないです。
まず、このキックオフ前の円陣を組んでいるような表紙、最高!
中面はサッカーのピッチを模したデザインや、何となくサモアっぽいデザインが展開(見たらわかるけど、本当に何となくサモアっぽいんです)。書体や色味、スチール写真など、作品の世界観そのままのとても楽しげなデザインになってます。
途中、紙の色が変わったり、2色になったり、変化をつけてきてる点もグッドです。2色のページを挿しこんでくるのはサーチライト・ピクチャーズのパンフレットでは恒例ではあるけど、このような変化があるのは読者を飽きさせないための大事な手法なので、素晴らしいと思いますよ。
内容
キャストインタビュー、キャストコメント、監督インタビュー、キャラクター紹介、レビュー、プロダクションノートなど、作品本編に関することをしっかりと押さえつつ、サモア文化やサッカーネタなどの周辺情報もしっかりと掲載されていて、とてもボリューミーな内容になってます。
さすがサーチライト・ピクチャーズ発行のパンフレット。そつがない!
そして本作は「実話ベース」なので、もちろん登場人物のモデルとなった人がいるわけです。
本作のヒロイン?的なキャラクターである「ジャイヤ」のモデルとなったジャイヤさんと(わかりにくいけど登場人物の名前と、モデルとなったご本人の名前が一緒)、「ジャイヤ」を演じた俳優のカイマナさんの対談形式のインタビューは興味深い内容でした。
ジャイヤさんはファファフィネ(サモア第3の性)と呼ばれるトランスウーマンなんです。そして、ファファフィネの世界初のサッカー代表選手なんです(すごい!)。ちなみに「ジャイヤ」を演じたカイマナさんもファファフィネ。めちゃくちゃ説得力のある配役。
作品に関すること、2人が対面したときのこと、ファファフィネとしての難しさや責任などなどが語られていて、良くも悪くもいろいろな思いを感じて生きていると思うんですけど、お二人ともとても明るくて前向きなんですよね。お二人の生き様を感じられる素敵なインタビューでした。
内容が盛り盛りだくさんで読み応えがめちゃくちゃあります。読んで楽しい見て楽しいパンフレット。これが940円(税込)で購入できるなんて安い買い物!
まとめ
2月は『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『一月の声に歓びを刻め』『瞳をとじて』『夜明けのすべて』『落下の解剖学』『ネクスト・ゴール・ウィンズ』の6作品を鑑賞、そして6冊のパンフレットを購入しました。
この中で1冊オススメするとしたら『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』ですね。キャストインタビューやコメントが充実しているし、作品の裏側(撮影セットやVFXに関すること)もしっかりと掲載。そして作品の世界観が表現されたファンタジックなデザイン。クオリティが高いパンフレットだと感じました。
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が気に入ったならばパンフレットは買うべし!
では、3月も映画ライフ、パンフレットライフを楽しみたいと思います。いや、一緒に楽しみましょう!