映画パンフレットレビュー。ホアキン・フェニックス主演!アリ・アスター監督作品『ボーはおそれている』

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日常のささいなことでも不安になり怖がりのボーは、怪死した母親のもとに駆けつけようとするが、その道中で奇想天外な出来事に巻き込まれる…

『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』の鬼才アリ・アスター監督と『ジョーカー』『ナポレオン』のホアキン・フェニックスがタッグを組んだオデッセイ・スリラー『ボーはおそれている』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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難解な本作『ボーはおそれている』の内容がしっかりと解説されているし、デザインは秀逸。素敵なパンフレットです!萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:148mm × 210mm(A5)
  • ページ数:52ページ
  • 編集・発行:ハピネットファントム・スタジオ
  • デザイン:大島依提亜、中山隼人
  • 絵:ヒグチユウコ(P41)
  • 編集協力:中谷祐介、小林真理、SYO
  • 印刷:二光
  • 発行日:2024年2月16日
  • 定価:1,100円(税込)
パンフレット掲載内容
  • INTRODUCTION
  • STORY
  • 監督&スタッフプロフィール
  • キャストプロフィール
  • プロダクションノート
  • アリ・アスター監督インタビュー
  • エッセイ/SYO(物書き)
  • 『ボーはおそれている』解析/小林真理(映画評論家・映画監督)
レンツ
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では、『ボーはおそれている』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

A5サイズのコンパクトなパンフレット。

ボーの印象的なパジャマを模した表紙。シルク地のテカり具合の表現(印刷)が実に素晴らしいです。お見事。(ポケットの立体感もお見事!)

そして、ずらし折りの加工がされています。

『Beau IS AFRAID』の「D」が次ページと重なっていたり、サイズの違うページが4ページほど続いていたり、52ページというページ数による厚みがあったり、製本や断裁にはかなり気を使ったのでは。

レンツ
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製本屋さんの泣き顔が目に浮かぶデザイン、作りになってます(笑)

「D」の重なり具合といい、サイズ違いのページの製本といい、ズレもなく完璧な製本・断裁。

ずらし折りの名手(?)大島依提亜さんらしい凝ったデザインを製品としてしっかりと仕上げた製本屋さん、印刷会社さん。皆さんの素晴らしい仕事っぷりに拍手!

中面デザイン

中面はスミ(黒)1色です。一見シンプルなんですけど、実はいろいろとデザインが凝っていて、本作の世界観がうまく表現されています。

まずは文字。本文にはオーソドックスな明朝体が使われてます。その本文の文字は基本的に長体(ちょうたい)がかかってます(長体とは横の比率を縮めて文字を縦長にする加工)。平体(ひらたい)がかかってる部分もあり(平体とは縦の比率を縮めて文字を横長にする加工)、全体的になんだか落ち着かない感じに。

本文は横書きの2段組で展開されてます。その2段の間にあるスペースが少し波打っていて「道」のように見えるデザインに。

そして各ページの下部には、森の中を歩いているボーの連続写真が配置。

文字の動きでボーの「落ち着かなさ」が、2段組の間の空きでボーの帰省をイメージした「道」が、そしてページ下部の連続写真でボーの「災難」が表現されています。これらのデザインは僕の勝手な解釈ですが、あながち間違ってないと思いますよ。

レンツ
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本作の世界観を表現したデザイン。素晴らしいです!

コンテンツチェック

レンツ
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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

キャストインタビューやコメントはありませんが(残念)、プロダクションノート、アリ・アスター監督のインタビュー、「おそれ」を中心に展開されるSYOさん(物書き)のエッセイ、小林真里さん(映画評論家/映画監督)の『ボーはおそれている』解析など、奇想天外な本作の理解が深まるような内容になってますよ。

プロダクションノート&アリ・アスター監督インタビュー

アリ・アスター監督がボーのキャラクターを解説したり、ボーを演じたホアキン・フェニックスとの撮影秘話や評価を語ったり(大絶賛!)、いったい何を描こうとして、そして観客にどのように感じて欲しいのかなど、本作の本質的なことについても触れられています。

本作を観て、あまりのカオスな内容に頭がついていかなかった僕としては、かなり理解が進んで納得感のあるプロダクションノートと監督インタビューでした。

このパンフレットを読んでから本作を観ると、より楽しく本作を観ることができると思いますよ。もっと言うと、本作だけじゃなく、アリ・アスター作品をより楽しめるんじゃないかな。アリ・アスター作品の根本みたいなところに触れられているので。

『ボーはおそれている』解析/小林真里(映画評論家/映画監督)

このパンフレットのコンテンツで、いちばんおもしろかったのは、8ページにもわたって展開される小林真里さん(映画評論家/映画監督)の「『ボーはおそれている』解析」ページ。本作を頭から、いろんなキーワードをもとに解説してくれて、本作を理解する上でめちゃくちゃありがたい内容でした。

ボーの引き出しからチラッと見えた「ポラロイド写真」、グレースに耳打ちされた「チャンネル78」、森でのファンタジックな「アニメーション」、本作でもっとも謎だった「天井裏」、アリ・アスター作品らしいグロさをみせた「首なしの死体」などなど、かなり興味深いキーワードを挙げて解説してくれてます。

アリ・アスター監督の過去作やオマージュ元の作品などを挙げつつ解説されるところもあり、非常にわかりやすく、と同時に知識として得られるところも多くて、ホントに素晴らしい『ボーはおそれている』の解析だと思いましたよ。必読。

エッセイ/SYO(物書き)

さまざまな「おそれ」の例を挙げつつ、「おそれ」と想像力の相関関係であったり、「おそれ」が強迫観念や妄想にスライドして心身を蝕んでいくというメカニズムを提示したり、「おそれ」を分析して言語化したSYOさんのエッセイ。

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とてもわかりやすくて腑に落ちるエッセイですよ。

本作『ボーはおそれている』だけじゃなく『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』といったアリ・アスター作品のテーマについても言及されていて、確かにこの3作品のテーマは一貫しているなと、すごく納得しました。

想像力と強迫観念。僕たち観客をかなり深いところまで連れて行ってくれていたようですよ、監督は。とってもわかりにくいけど(笑)

アリ・アスター作品を「クセのある変な映画」という感想を持っていた僕としては、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃいました。

ちなみに僕はデザイナーなんですけど、チラシやリーフレットなどのデザイン案を制作しているとき「このデザイン案はお客さんに喜んでもらえるかな」「クソミソに言われないかな」とか余計な想像力が働いてしまって不安になり、「念のためもう一案作っておこう」だなんて思うことはザラにあります。

なんかこれって、強迫観念に近いものがありますよね。

おそれているボーのことは、笑えません。

いまって、心を病んでしまう人って多いじゃないですか。SYOさんのエッセイを読むと、アリ・アスター監督はまさに現代社会の心の問題を提起しているように感じるんですよね。実は社会派映画だったのかしら。「クセのある変な映画」って思っててごめん。

SYOさんのエッセイのおかげで本作について、アリ・アスター作品についての理解が深まりました。ぜひ読んでみてほしい。

総評

プロダクションノートやアリ・アスター監督のインタビュー、小林真理さんの解析ページのおかげで本作を深く知ることができるし、大島依提亜さんの凝ったデザインも素敵。全体的にクオリティの高いパンフレットです。

お金を出して買う価値は十分にあると思いますよ。

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これが1,100円(税込)で購入できるとは!お買い得!

本作を観てちょっと理解が追い付かなかった方やアリ・アスター作品をもっと深く知りたい方に、自信をもってオススメできるパンフレットです。

そして何より本作『ボーはおそれている』を気に入ったそこのあなた、絶対に買ったほうがいいですよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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