先天性の心臓疾患を持つ次女の佳美が「余命10年」と宣告される。医療の知識も経験もない父・宣政は佳美の命を救うために人工心臓の開発に乗り出すが…
世界で17万人の命を救ったIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテル誕生の実話を、主演に『鎌倉殿の13人』の大泉洋を迎え、『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督がノンフィクション作家・清武英利氏の20年以上の取材ソースを原作に実写映像化した『ディア・ファミリー』のパンフレットを紹介します!
デザイン・内容ともに温かみのある優しい雰囲気が漂うパンフレット!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『ディア・ファミリー』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
表紙デザイン
B5サイズ(182mm×257mm)のパンフレット。
淡いパールっぽい輝きを持つ紙(きらびき?)にピンク色の行書体で「ディア・ファミリー」の文字。その下に筆記体で「dear family」。シンプルなんですが、紙質と書体と色がうまくマッチしていて、とても温かみが感じられるデザインです。
裏表紙は作中での印象的なシーンのショット。グッときます…。
中面デザイン
背景に淡いグリーンやブルー、ピンクが敷かれているページが数ページありますが、基本的には白地ベースにグレーの文字(黒90%くらいでしょうか)。書体はシンプルな明朝体とゴシック体を使用。本文中の写真は基本的に角版で、四隅が丸く加工してあります。そして、各ページの左上にあるハートマークと「dear family」の文字が組み合わさったアイコンがいいアクセントになってます。
デザインを構成する要素はとてもシンプルですが、本文の文字が黒ではなくグレーにしてあったり、写真の角が丸く加工してあったり、ハートマークのアイコンが毎ページ配置されていたり、温かく優しい本作の雰囲気を演出するデザインが施されていて、とても好感度が高いです。
写真の大きさと文字のバランスがよく、スッキリとしていて読みやすいのもグッドポイントです。
表紙と中面に一体感があるデザイン。素晴らしい!
コンテンツチェック
「キャストインタビュー」「キャストコメント」「月川翔監督インタビュー」「清武英利(原作者)インタビュー」「筒井宣政(主人公モデル)インタビュー」「スタッフインタビュー」など、インタビューが中心の内容。
本作の制作に実際に関わった人たちの声なので、作品への思いやこだわりが伝わってくるし、何より作品愛が感じられます。とても読みごたえがあるし、読了後は何だか温かい気持ちになりますよ。
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
キャストインタビュー
夫婦を演じた大泉洋さんと菅野美穂さんはそれぞれ見開き2ページずつ、三姉妹を演じた福本莉子さんと川栄李奈さんと新井美羽さん、そして研究医の富岡を演じた松村北斗さんはそれぞれ1ページずつ、インタビューは全8ページで展開されてます。
主要キャストのインタビューがガッツリと掲載されているのは嬉しいところ。
ちなみにレポーターを演じた有村架純さんと本作の悪役(?)を一手に引き受けた光石研さんはコメントが掲載されてます。
大泉洋さんをはじめとする坪井家を演じたキャストの皆さんは、筒井家(本作のモデルになったご家族)の皆さんと実際に会ったり、オンラインで対話して役作りに生かしたようです。作品への真摯な姿勢や覚悟を感じました。
キャストの皆さんは、筒井家の方々への思いや作品への思い、印象的なシーンや共演者とのエピソードなどを語ってます。
そんな中、ところどころでユーモアを交えて受け答えする大泉洋さんはさすがのひと言。作中屈指の感動シーンについてもボヤいてましたからね(笑)。インタビューでも自分らしさを出してくるなんてこれぞ大泉洋(笑)。でもこのような飾らなさが皆を惹きつけるし、場の雰囲気を良くするんでしょうね。
あと印象的だったのは三女・寿美(すみ)を演じた新井美羽さん。とても元気で初々しくて可愛らしいインタビューで、現場の雰囲気の良さを感じさせるエピソードは温かい気持ちになりましたよ(大泉洋さんのトークをバズーカトークと言っていた 笑)。「安定しない、いい時期の彼女を撮らせてもらった」と月川監督が評した新井美羽さんの今後の俳優人生にも期待したいですね。
6名ともユーモアを交えつつ(特に大泉洋さん)とても真摯で温かみのある素敵なインタビューですよ。
月川翔監督インタビュー
本作の元になった実話への思い、筒井宣政氏の印象や物語の展開ことなどが語られてますが、主に紙面を割いたのはキャストに関する言及。
坪井家の5人(大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、新井美羽)と松村北斗さん、有村架純さんについて語られてます。
本作の印象的なシーンや撮影中のエピソード、過去の出演作を例に出しながら詳細にキャストの皆さんについて語られています。キャスティング理由やキャストへの期待など、監督のキャスト評を知ることができる興味深いインタビューとなってます。
その他には、大泉洋さんのサービス精神はすごいなぁ…なんてエピソードもありますよ。
清武英利(原作者)インタビュー
筒井宣政氏と知り合って23年、20年以上にわたり筒井家と向き合ってきた清武英利氏のインタビュー。
原作にまつわる取材のこと、筒井宣政氏のこと、筒井家のご家族のこと、そして本作を観ての感想などが語られてます。
長年にわたり筒井家の取材を続けてきた清武氏のインタビューはすべて興味深くておもしろいんですが、宣政氏が父親の顔をのぞかせる佳美さんの「青春」のくだりが特におもしろかったです。僕も娘を持つ父親なんですが、宣政氏の気持ちはわからないではない「青春」裏話。この「青春」のくだりが本編ではカットされていたのは個人的には残念。あってもよかったような…。
そして、キャスト、月川監督、スタッフの皆さんが目指した作品の到達点をすべて語ってくれたんじゃないかと思える、完成作を観た清武氏の感想は必読。さすが原作者。作品の肝がわかってらっしゃるなと感じました。
宣政氏を裏でフォローするご家族のエピソードも微笑ましくておもしろかったですよ。なんかちょっと目に浮かぶかも。
筒井宣政(主人公モデル)インタビュー
主人公のモデルとなった宣政氏ご本人の言葉を絶対に読みたいと思っていたので、掲載されていたことに安心。大泉洋さんが演じた坪井宣政のモデルとなった筒井宣政氏のインタビュー。
映画化の話が来たときの思い、大泉洋さんとの対話、人工心臓について、本作を観ての感想などが語られています。清武氏のインタビュー同様にすべてが読みどころです。
とても気さくな人柄を感じるインタビューで、大泉洋さんとの相性の良さを感じました(実際に大泉洋さんと意気投合したらしいです)。
完成作を観た宣政氏の感想には感銘を受けました。同じく娘を持つ父親として、僕が宣政氏と同じ立場になったとき、あきらめずに行動できるかは怪しいところ。親としては当然のことなんでしょうけど、言うは易く行うは難し。宣政氏にはリスペクトしかありません。必読のインタビューです。
すごいことをやってのける人って、ご自身は特別なことをやっている認識はないんでしょうね。
スタッフインタビュー
林民夫氏(脚本)、兼松衆氏(音楽)、花谷秀文氏(美術)、山田康介氏(撮影)、小山大次郎氏(装飾)、そしてスタッフと呼んでいいのかわかりませんが、人工心臓製造・実験・監修の田中隆氏(安久工機)ら6名ものスタッフインタビュー。
僕たち観客が何の違和感もなく本作『ディア・ファミリー』に没入できたのはスタッフの頑張りのおかげなんだと認識させてくれるスタッフインタビューはもう必読ですよ。
本作の世界観を語る上で忘れちゃいけないのは「時代感」。時代設定は70年、80年、90年、そして2000年代の4つの時代をまたいでるんですよね。僕個人としては作中のファッションやヘアースタイルで「時代感」を感じられたけど、当然それだけじゃないわけで。
僕たち観客が気付かないところにまでこだわって「時代感」を作り上げたスタッフの頑張りやプライドを存分に感じられるスタッフインタビューはぜひ皆さんにも読んでいただきたい。
本作を観た多くの人が経験してきた時代なので、中途半端なことをやると嘘がばれちゃうので、スタッフさんたちは気を使ったと思いますよ。でもね、完璧でした!
そして忘れてはならないのが、人工心臓製造・実験・監修の田中隆氏のインタビュー。
田中氏のような「本物の人」が関わっているからこそ人工心臓製造のリアリティがより増したんでしょうね。実際に人工心臓の製造に関わってきた田中氏の言葉は深いです。
総評
表紙、中面ともに温かみのあるデザイン。キャストインタビューや監督インタビュー、スタッフインタビューなど、キャストやスタッフたちの思いが伝わってくるインタビューを中心とした充実した内容。
デザイン、内容ともに優しい雰囲気にあふれているパンフレットです。
お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。
これが880円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『ディア・ファミリー』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。