舞台は1980年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。その町で、忘れられない恋人の影を追う青年アーサーは希少価値を持つ美しい女神像を発見する。彼は紀元前に繁栄した古代エトルリア人の遺跡を発見できるという不思議な能力を持っていた。女神像をめぐって事態は闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展。アーサーが最後に見たものは…
『チャレンジャー』のジョシュ・オコナーを主演に迎え、『幸福なラザロ』などで高く評価されるアリーチェ・ロルヴァケルが監督を務めた本作。
それでは、墓泥棒の数奇な運命を描いた『墓泥棒と失われた女神』のパンフレットを紹介していきます!
本作の世界観を表現した可愛らしくてアンティークなデザイン、理解が深まる読みごたえのある内容。とても雰囲気のある素敵なパンフレットです!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『墓泥棒と失われた女神』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
表紙デザイン
B5サイズ(210mm×297mm)の小型パンフレット。
「首のない女神像」の線画イラストが中央に配置され、それを囲むように飾り罫線で装飾が施されています。美術品のようなアンティークなデザインは本作の世界観にピッタリ。いいデザイン!
ちなみに裏表紙にも装飾が。
中央にある「鳥」の線画イラストと英文、そしてそれを囲む飾り罫線の組み合わせがグッド。裏表紙も表紙同様にアンティークな雰囲気になってますよ。
中面デザイン
表紙はコート紙(光沢のある紙)ですが、中面はザラっとした上質系の紙(コーティングされていないパルプ紙)を使用。紙の質感が良いです。
紙の白地をベースに紺色の文字、写真はカラーというのが基本。
線画イラストやカラーのイラストが散りばめられていたり、飾り罫線が使われていたり、可愛らしさがありつつアンティークな雰囲気に。
パラパラっとページを流し見するだけでも「なんだか素敵!」と思えるようなデザインになってます。
デザインを見ただけで買ってよかったと思いましたよ。
コンテンツチェック
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
「STORY(ストーリー)」「アリーチェ・ロルヴァケル監督コメント」「監督が本作においてインスピレーションを受けた作品」「コラム」など、監督の作家性を知ることができたり、本作に対する理解度が深まったりと、文字量はそれほど多くないですが、読みごたえのある内容となってます。
充実の「STORY(ストーリー)」
どんな映画パンフレットでも冒頭に「STORY(ストーリー)」と題して作品のあらすじが掲載されているんですけど、だいたい物語のさわりだけなんですね。しかし、本パンフレットは物語の流れがほぼすべて掲載されています。
現実と幻想の曖昧さ、恋人の存在の不確かさ、主人公アーサーの背景が描かれてない点など、内容的に掴みどころのない感じが個人的にはしていたので、本作のストーリーがしっかりと掲載されているのはとてもありがたいです。
ストーリーをしっかりと押さえてからパンフレットを読み進めるとより本作の理解が深まりますよ。
アリーチェ・ロルヴァケル監督コメント
「STORY」の後に掲載されているのが、4ページにわたり掲載されているアリーチェ・ロルヴァケル監督のコメント。これさえ読んでおけば本作をほぼ理解できるんじゃないか、というくらいに充実した内容です。
「エトルリア人の墓にまつわる話」「この作品を撮ろうと思った理由」「墓泥棒(トンバローリ)のこと」「アート市場での不正取引」などが語られていて、かなり興味深く読みました。
本作を鑑賞しただけではわからないような背景や、僕がまったく知らない世界のことに言及されています。単純に読み物としておもしろいし知識も増えるので、この監督コメントは一読の価値ありです。
パンフレット後半には「KEYWORDS」と題した解説ページがあるので、より深く詳しく本作のことを知ることができますよ。
コラム
「ロルヴァケルの優しい革新性」と題した山崎まどか氏(コラムニスト)と「ロルヴァケルの映画的記憶」と題した古賀太氏(日本大学芸術学部教授/『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』著者)のコラムが掲載。
山崎まどか氏コラム
山崎氏は、ロルヴァケル監督の過去作を例に出しながら、ロルヴァケル監督の作家性や本作について解説されています。
資本主義社会の体制を描いている点や、新しい価値観を提示しているという点に言及されているところは特に興味深かったです。神話的でファンタジックな作品ではあるけど、しっかりとした現代的なメッセージ性もあるんですね。
イタリア映画の伝統を感じると本作を評する山崎氏。ロルヴァケル監督に興味を持つには十分な内容のコラムです。
前作『幸福なラザロ』(2018年)を観てみようかな、と個人的には思ってますよ。
古賀太氏コラム
古賀氏は、過去のイタリア映画や監督を例に出しながら本作を解説しています。
本編では過去のイタリア映画を想起させるシーンがいろいろとあるらしく、それを「ロルヴァケル監督の映画的記憶」としてまとめられています。
恥ずかしながら僕はイタリア映画に疎いので、本コラムに出てくる作品でピンとくるものはありませんでしたが(笑)、古賀氏の解説が丁寧なのでイタリア映画への興味がわいてきました。
イタリア映画に精通している方にとってはより楽しく、興味深く読めるんじゃないでしょうか。
総評
可愛らしくてアンティークなデザイン、そして本作の内容を補完して余りある充実した内容。
アリーチェ・ロルヴァケル監督の過去作やイタリア映画にも興味を持たせてくれるという、なんとも魅力的な1冊です。
映画パンフレットととして、非常に完成度の高い仕上がりになってます。
お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。
これが900円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『墓泥棒と失われた女神』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。