インド映画『花嫁はどこへ?』パンフレットレビュー。『ムンバイ・ダイアリーズ』のキラン・ラオ監督作品。

アジア

とあるインドの村。結婚式を終えた2人の花嫁・プールとジャヤは、それぞれの花婿の家へ向かう途中で同じ満員列車に乗り合わせる。たまたま同じ赤いベールで顔が隠れていたことから知らぬ間に入れ替わり、そのまま別の嫁ぎ先に連れて行かれてしまう…

子役から活躍しインフルエンサーとしても注目されるニターンシー・ゴーエルが花嫁プール、本作が映画初主演となるプラティバー・ランターが花嫁ジャヤを演じ、『ムンバイ・ダイアリーズ』などで知られるキラン・ラオ監督が花嫁の思いがけない人生の行方を描いたヒューマンドラマ『花嫁はどこへ?』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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本編同様、とても可愛らしいパンフレットです!萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:182mm × 257mm(B5)
  • ページ数:28ページ
  • 編集・発行:松竹株式会社 事業推進部
  • 編集:伊東花歩、宮部さくや(松竹)
  • デザイン:大寿美デザイン
  • 発行日:2024年10月4日
  • 定価:900円(税込)
パンフレット掲載内容
  • キラン・ラオ監督コメント
  • Introduction
  • Story
  • コラム/ISO(ライター)
  • インタビュー/キラン・ラオ監督
  • スタッフプロフィール
  • キャストプロフィール
  • コラム/たかのてるこ(地球の広報・旅人・エッセイスト)
  • 『花嫁はどこへ?』にまつわるインドの豆知識
  • コラム/松岡環(アジア映画研究者)
  • コラム/菅野美佐子(文化人類学、ジェンダー研究)
  • 『花嫁はどこへ?』を彩るインド料理とお菓子の世界
レンツ
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では、『花嫁はどこへ?』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

B5サイズ(182mm×257mm)のパンフレット。

イラストが散りばめられたピンク色の可愛らしい表紙。ザラっとした手触りの紙が使われてます。

中央の白い飾り罫線の中に作品タイトル「Laapataa Ladies」(ヒンディー語)と「花嫁はどこへ?」が配置。ヒンディー語を大きく扱うあたりは、インド映画へのリスペクトを感じます。

中面デザイン

全体的な色味、インド感が演出されている飾り罫線、散りばめられた切り抜き写真やイラストなど、表紙と同様にとても可愛らしい中面デザイン。

表紙に使われている飾り罫線の形状が中面でも要所要所で使用されているので、パンフレットに統一感が出ています。飾り罫線の使い方がホントに上手です。

文字はやや小さめだけど、写真の入れ方や余白の使い方がうまく、紙面全体のバランスがいいので、気持ちよく読めます。

可愛らしい上に可読性も高い。デザインのクオリティーが高いパンフレットですよ。

コンテンツチェック

レンツ
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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

「Introduction」「Story」「監督インタビュー」「コラム」「インドの豆知識」「インド料理とお菓子の紹介」など、映画パンフレットととして押さえるべきところはしっかりと押さえつつ、ちょっぴり遊び心もプラスされた内容になってます。

キラン・ラオ監督インタビュー

「(脚本コンペで見つけた)脚本を映画化することになった経緯」「キャスティングについて」「主人公の女性2人をどんな思いを込めて描いたのか」「インドでの女性の地位」など、本作のことから女性の地位という社会的なことまで、幅広く語っています。

印象的なのは「ちゃんとした女性というのはフロード(詐欺)で、女性を従わせるための手口なのです!」という言葉(屋台のおばちゃんマンジュも劇中で言っていた)。かなり強烈な言葉で、キラン・ラオ監督の心の奥底にある怒りのようなものを感じました。

作品としては全体的に可愛らしい雰囲気があります。しかし、親の決めたことに従わないといけない若い女性へのメッセージや、女性の地位の低さに対する不満というキラン・ラオ監督の強い思いを感じることができる作品なので、監督インタビューが1ページしか掲載されてないのはちょっと少ないかなという印象。

個人的にはとても好きな作品だし、キラン・ラオ監督の強い思いをもっと感じたかったので、もう少し監督インタビューにページを割いて欲しかったなと思いました。

ちなみに、本作の時代設定は2001年なんですが、今はその時代よりかは良い方向に向かってるようですよ。

充実のコラム

コラムは4本掲載されてます。

ISO氏(ライター)は「偶然の入れ替わりから広がる幸福の波紋」と題したコラムを、たかのてるこ氏(地球の広報・旅人・エッセイスト)は「ヒロインたちが教えてくれた、"自分の人生"を取り戻すための旅」と題したコラムを、松岡環氏(アジア映画研究者)は「『花嫁はどこへ?』が描くインドの結婚事情」と題したコラムを、菅野美佐子氏(文化人類学、ジェンダー研究)は「インドのジェンダー観 女性はどこまで変わったのか?」と題したコラムをそれぞれ寄稿されてます。

フェミニズム映画を例に出しながら展開されるISO氏のコラムはとても読みやすくて本作を上手に解説してくれる良いコラムです。そして、他のお三方のコラムは「インドの女性事情」に言及されていて、とても勉強になるコラムになってます。

いかにインドの女性たちが我慢を強いられてきたのか、自分の意思では決められない結婚事情や結婚式のお金(持参財)問題、インドのジェンダー観の歴史など、僕の知らない嘘のような本当の話を知ることが出来て、とても興味深く読みました。

特にたかのてるこ氏が、女性の現状を変えるには「周りが」とか「親が」とか他者を主語にした言葉ではなく「私はこう思う」とか「私はこうしたい」という自分の主語を取り戻す必要があると語っているんですが、大共感です。

自分の人生なんだから「私は」という主語を大切にすべきですよね。世間体や親に気を使っていては人生楽しくないじゃないですか。これは女性とか男性とか関係なく、自分の人生を生きるためにはとても重要だと思いましたよ。

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4本ともためになるコラムなので、ぜひとも読んでいただきたい!

遊び心のあるインドの豆知識&料理紹介

あと、本作『花嫁はどこへ?』にまつわるインドの豆知識と本編に登場するインド料理とお菓子を紹介するページがあるんですが、これが実にいい。

インドの豆知識ページでは、結婚にまつわることや相手の足を触る独特な挨拶などについての解説があり、インドの風習や慣習はおもしろいなと感じると同時に、ちょっと息苦しさも感じたり。

料理紹介ページでは、主人公プールが作った「カラカンド」というお菓子やディーパクの母親が作った「レンコンのサブジ」のレシピが掲載されてます(個人的には「カラカンド」は食べてみたい)。

僕は料理の方はさっぱりなので、料理好きの方、本編に出てきた料理に興味がある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。インドを感じられるかもしれないですよ。

映画パンフレットに豆知識やレシピのような遊び心のあるページがあると、読んでいて楽しい気持ちになるし、なんだか得したような気分になります。

作品の本筋とは少し外れているプラスアルファのページは映画パンフレットの存在価値を上げてくれると個人的には思っていて、他の映画パンフレットにも浸透して欲しいなと思います。

総評

本編の可愛らしいところを抽出したかのような素敵なデザイン、インドの女性事情に詳しくなれる充実した内容。インドの豆知識や料理紹介という遊び心のあるページがあるのもグッドポイント。

とてもクオリティーの高いパンフレットですよ!

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これが900円(税込)で購入できるとは!買って損なし!

本作『花嫁はどこへ?』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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