石井裕也監督作品『本心』パンフレットレビュー。池松壮亮主演のヒューマンミステリー。

邦画

同居する母・秋子から「大切な話をしたい」という電話を受けた石川朔也。帰宅を急ぐが、豪雨で氾濫する川に流された母を助けようと川に飛び込んで昏睡状態に陥ってしまう。1年後に目を覚まし、母が自由死を選択して他界したことを知る。激変した世界の中、自由死を選択した母の本心を知るために「VF(バーチャル・フィギュア)」の開発者に母を作って欲しいと依頼する…

『僕のお日さま』『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の池松壮亮を主演に迎え、『舟を編む』『月』の石井裕也監督が『マチネの終わりに』『ある男』の平野啓一郎の同名小説を映画化したヒューマンミステリー『本心』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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パンフレットの中にノート(母秋子の日記帳?)を模したページが綴じられている、凝った装丁が特徴のパンフレット!萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:182mm × 257mm(B5)
  • ページ数:32ページ
  • 発行:(株)ハピネットファントム・スタジオ
  • デザイン:石井勇一(OTUA)
  • 発行:(株)ハピネットファントム・スタジオ、望月麗奈(サンクレイオ翼)
  • オフィシャルライター:SYO
  • 印刷:北斗社
  • 発行日:2024年11月8日
  • 定価:1,000円(税込)
パンフレット掲載内容
  • INTRODUCTION
  • STORY
  • 『本心』を巡るキーワード
  • 池松壮亮インタビュー
  • キャストインタビュー/三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子
  • 石井裕也監督インタビュー
  • スタッフプロフィール
  • 清田純(AI監修)インタビュー
  • 平野啓一郎(原作者)コメント
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では、『本心』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

B5サイズ(182mm×257mm)のパンフレット。

何かを思慮しているような、ガラス越しの朔也(池松壮亮)の全面写真、右下に白抜きで「本心」の文字。かなりシンプルな表紙デザイン。

裏表紙にはガラスが取っ払われてくっきりはっきりした朔也の全面写真。

モヤモヤした朔也の心が晴れていく様が表紙と裏表紙で表現されているんでしょうか。いろいろと考えられる余白のあるデザインですね。

中面デザイン

B5サイズのパンフレットの中に綴じられている「ノートをイメージしてデザインされたページ」には手描き文字が使用されていて、よりノート感が強く表現されてます(やや読みづらい書体だけど雰囲気がいいのでOK)。

装丁も含めてとても素敵なデザインのパンフレットですよ。

コンテンツチェック

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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

池松壮亮インタビュー

ご自身が読んだ小説『本心』を石井裕也監督に薦め、映画化のきっかけを作った池松壮亮さんの熱量高めのインタビューが3ページにわたって掲載されています。

「本作『本心』は人間の"欲望"の先に訪れるこれからの領域についての物語とも言える」という池松さんの言葉に共感しました。

亡くなった愛する誰かのVF(バーチャル・フィギュア)をAIで再現して本心を聞くなんて、人間の欲望以外の何物でもないですからね。

その欲望をAIは叶えてくれてハッピーなはずなんだけど、それはそれで居心地が悪かったりどこか認めたくなかったり、場合によっては脅威に感じる。その不安定な気持ちが本作で描かれていることであり、今を生きる僕たちの現在地ではないかと個人的には思います。

池松さんのインタビューは共感度が高く、僕自分の思考をさらに進めてくれるような言葉が並んでいて、読んでよかったと思いましたよ。

キャストインタビュー

5つの決まった質問に答えるというQ&A形式のキャストインタビュー。

ラインナップは三吉彩花さん、水上恒司さん、仲野太賀さん、田中泯さん、綾野剛さん、妻夫木聡さんの6名(田中裕子さんは別コメントという形で掲載)。

特に「テクノロジーやAIの急速な進化に関してどのように感じるか」「普段から"本心"は語るほうか」という2つの問いに対する答えは、俳優さんそれぞれの思いや戸惑いが伝わってきて興味深かったです。

「テクノロジーやAI」に関する質問に対して、テクノロジーに脅威を感じている人もいれば必要ないと答える人もいる。人間の素晴らしさを語る人もいる。

石井裕也監督がインタビューで触れていたけど、ハリウッドのストライキ(AIの起用による肖像権の侵害や雇用機会の損失が争点のひとつ)があったりして、俳優さんにとってはテクノロジーの進化やAIの登場はシビアな問題になっているんでしょうね。俳優さんだからこそ様々な意見や思いがあるのかもしれないです。

「本心」に関する質問に対しては、時と場合により本心を語る人もいれば本心を語らないで乗り切ろうとするけどどっかのタイミングで漏れ出ちゃう(笑)という可愛い回答をする人もいる。

これもまた誰かを演じることを生業としている俳優さんだからこそ「本心」の扱い方は独特のような気がしますよ。

俳優さんそれぞれの本心(?)がわかるキャストインタビュー。面白かったです。

石井裕也監督インタビュー

池松壮亮さんから『本心』というバトンを渡された石井裕也監督のインタビューは4ページにわたって掲載されてます。

創作の根源やこの作品で何を描こうとしたのかなど、石井監督のパーソナルな部分に触れられているところが多々あり、石井監督の頭の中すべてがわかるとは言いませんが、輪郭のようなものが朧げに見えるようなインタビューになってます。

本作は人の本心についてだけではなく、差別や格差などの社会問題が多層的に描かれているので、鑑賞後は頭の中で整理がつかない状態だったんですが、石井監督のインタビューを読んでかなり整理できました。何を語っていたのかはここでは割愛しますが(買って読んでね)、僕のように「迷子」になっている方はぜひ読んで欲しいです。

そして、池松壮亮さんの試練、三吉彩花さんの覚悟、念願の田中裕子さん、妻夫木聡さんと仲野太賀さんへの絶大なる信頼など、キャストに関する言及も興味深かったです。

特に本作で素晴らしい演技を見せてくれた三吉彩花さんの覚悟が感じられるエピソードはグッときました。とても誠実な人柄を感じ、僕の中では評価爆上がりです(僕の評価なんて何の価値もありませんが)。

清田純(AI監修)インタビュー

このパンフレットの価値を高めていると個人的には思っているAI監修の清田純氏のインタビュー。

「本作『本心』の第一印象」「AIの歴史」「AIとのコミュニケーション」「今後の未来予想」などが語られていて、すべてが興味深い内容です。

「技術で人間の心を作れるのか」という問いに対する答えはかなり興味深かったです。作れます!という明確な答えはありませんが、すでに韓国や中国では故人をAIで再現するサービスが始まってるようですよ。何だか怖い。

内容は面白いしAIに関する知識も増えるというAI研究の最前線で活躍されている清田氏のインタビューは貴重で必読。それほど難しくなく、入門的な内容なのもグッド。

キャストや監督だけではなく、清田氏のようなその筋のプロの話を読めるのも映画パンフレットの醍醐味かなと思います。

総評

B5サイズのパンフレットの中にひと回り小さいノートが綴じられている凝った装丁、手描き文字の使用等、しっかりとデザインされたパンフレットです。

内容的には、熱量を感じる池松壮亮さんのインタビュー、本作への理解度がアップする石井裕也監督インタビュー、AIの知識が増えること間違いなしのAI監修・清田純氏のインタビューなど、インタビュー記事が充実しています。

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これが1,000円(税込)で購入できるとは!買って損なし!

本作『本心』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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