映画パンフレットレビュー。新垣結衣×早瀬憩ダブル主演!ヤマシタトモコ原作『違国日記』

邦画

人見知りの小説家・高代槙生は、亡くなった姉夫婦の娘・朝が葬儀の席で親戚にたらい回しにされるのを見かねて引き取ることに。ほぼ初対面の叔母と姪のふたり暮らしがはじまる…

『PARKS パークス』『ジオラマボーイ・パノラマガール』の瀬田なつき監督が、『ミックス。』『正欲』の新垣結衣と、オーディションで選ばれた新鋭・早瀬憩をダブル主演に迎え、ヤマシタトモコの人気漫画を実写映像化した『違国日記』のパンフレットを紹介します!

レンツ
レンツ

水色をベースにした爽やかで可読性の高いデザイン、インタビューやコメントを中心とした内容充実のパンフレット!萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:182mm × 257mm(B5)
  • ページ数:60ページ(+見返し)
  • デザイン:大島依提亜、中山隼人
  • 写真:久保田智
  • イラスト:ヤマシタトモコ
  • 編集:西宮由貴
  • 編集協力:狩野かおり
  • 写真(P48~49):瀬田なつき
  • 協力:遠藤薫、平尾まりこ(Shed Inc.)
  • 発行:東京テアトル
  • 印刷:アトミ
  • 発行日:2024年6月7日
  • 定価:1,000円(税込)
パンフレット掲載内容
  • Introduction
  • Story
  • キャストインタビュー/新垣結衣
  • キャストインタビュー/早瀬憩
  • キャストインタビュー/夏帆
  • キャストインタビュー/瀬戸康史
  • キャストインタビュー/小宮山莉渚
  • キャストコメント/伊礼姫奈、滝澤エリカ、中村優子、染谷将太、銀粉蝶
  • ヤマシタトモコ(原作者)コメント&イラスト&作品情報
  • コラム/羽佐田遥子
  • 瀬田なつき監督インタビュー
  • スタッフプロフィール
  • コメント/橋本絵莉子(「あさのうた」作詞・作曲)
  • 写真(24ページ)
レンツ
レンツ

では、『違国日記』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

B5サイズ(182mm×257mm)のパンフレット。

ボール紙のような紙にニス加工(?)された「違国日記」と「Worlds Apart」の文字。そして表紙の左側3分の1のスペースから裏表紙にかけて朝と槙生の海辺の写真。

レンツ
レンツ

とても重要なシーンのショット。とってもいい写真!

実はこの表紙、タイトルが印刷されているボール紙のような用紙の上に、朝と槙生のショットが印刷された紙が重なって張り付けられてるんです。

大島依提亜氏らしいめちゃくちゃ凝った表紙デザイン。

二種類の紙が重なっているために表紙がちょっと厚くなっていて、中ページを読むときに表紙がたわんでくれないので、物理的に若干読みづらさを感じたけど、デザインが素敵だからOK。

中面デザイン

水色の紙に黒文字。アクセントに青色(シアン100%?)の文字が使用されてます。書体は主に明朝体が使われてます。本文中の写真はすべて角版で比較的小さめに配置(巻末の写真ページは除く)。デザインを構成する要素はとてもシンプルです。

文字の大きさや行間の取り方が抜群で、とても可読性が高いです。そして写真の大きさや余白の取り方も上手なので、デザインとしてはシンプルなんですけど、デザイナーのスキルの高さがうかがえます。素晴らしいデザイン。

あとは、映画パンフレットには珍しい「見返し」があるのも特徴的。ちなみに見返しとは、書籍などでよくみられる表紙と本文(裏表紙と本文)を繋ぐ紙のこと。見返しがあることによって表紙と本文の耐久性が上がるんです。このパンフレットの表紙には特殊な加工がなされているので見返しを付けたんでしょうね。見返しがあることによって、オシャレ度がアップしています。

レンツ
レンツ

一見シンプルに見えるけど実は凝られている表紙デザイン、シンプルだけどとても読みやすくセンスが感じられる中面デザイン。パンフレットデザインとしてのクオリティはかなり高いですよ!パンフレットを持った質感もいい!

コンテンツチェック

レンツ
レンツ

では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

ダブル主演をつとめた新垣結衣さんと早瀬憩さんの「単独インタビュー」、「キャストインタビュー(夏帆さん、瀬戸康史さん、小宮山莉渚さん)」「瀬田なつき監督インタビュー」「コラム」などが掲載。パンフレット巻末に「プチ写真集」があるのもうれしい。読み応えのある内容となってますよ。

新垣結衣インタビュー

原作の魅力、槙生を演じる上で意識したことや試行錯誤したこと、撮影のエピソード、共演者のことなど、4ページにもわたるインタビューは読み応え十分。

新垣結衣さんご自身が原作のファンということもあり、原作へのリスペクトを強く感じました。

槙生をはじめとする登場人物への理解度の高さを感じたし、その上で、どのような作品にしたいのかという考えも持っていて、真摯に撮影にのぞんでいたことがよくわかる新垣結衣さんの言葉にはとても説得力があります。

槙生のセリフ回しや表情、ファッション、部屋の雰囲気など、かなり細かいところにまで言及されていて(ほぼ1ページ分!)原作ファンならより楽しく読めるんじゃないですかね。

あと、本作でもっとも重要な「槙生と朝の関係性」に関することや、とても印象的な「餃子」シーンに触れられているのは嬉しかったです。「餃子」シーンはホント素敵なシーンだったなぁ…(しみじみ)。

『正欲』のパンフレットにおける新垣結衣さんの受け答えを読んだ時にも感じましたが、すごく言葉を選びながら答えていることがわかるんですよね。もちろんこのパンフレットでも同様で、新垣結衣さんの頭の良さ、聡明さを感じます。もともと新垣結衣さんのことは好きですけど(突然の告白)、もっと好きになりました。

レンツ
レンツ

新垣結衣さんの『違国日記』や槙生への思い、どのように撮影にのぞんでいたのかという姿勢や撮影中の雰囲気がよくわかるとても濃密で素敵なインタビューなので、ぜひとも読んでいただきたいですね。

早瀬憩インタビュー

新垣結衣さんとダブル主演をつとめた早瀬憩さんのインタビュー。メインキャストととしては映画初出演らしいですよ。ちなみにテレビドラマ『ブラッシュアップライフ』では、夏帆さん扮する門倉夏希の中学時代を演じたそうです。本作に夏帆さんも出演してるのでね、ちょっと縁を感じますよね。

オーディションのこと、印象的なシーンや苦労したシーンのこと、そして撮影のエピソードなどが見開き2ページにわたって掲載されてます。

特に、あるシーンの撮影エピソードはすごく素敵。内容は書けないけどすごく素敵。槙生と朝の関係性のようですごく素敵。書けないけど(笑)。

ダブル主演をつとめたので、新垣結衣さんとのエピソードは多めに掲載されてます。いくつかのエピソードを読むと、新垣結衣さんが早瀬憩さんをあたたかく見守りつつ導いていったように感じました。とても良い関係性、そして撮影中の雰囲気が伝わってきて、何だか温かい気持ちになりましたよ。

それにしても早瀬憩さん、若いのに何て受け答えのしっかりしている子なんでしょうか。今どきの17歳って、すごい。

17歳の等身大の可愛らしい受け答えもあるし、役者として真面目な受け答えもあり、早瀬憩さんの魅力を存分に感じられる素敵なインタビュー。今後も応援したくなりましたよ。

キャストインタビュー

主演のお二人の他に、夏帆さんと瀬戸康史さんと小宮山莉渚さんのインタビューがそれぞれ1ページずつ掲載されてます。

レンツ
レンツ

夏帆さんの可愛らしさ、瀬戸さんの冷静さ、小宮山さんのフレッシュさが感じられるインタビューとなってます!

夏帆さんと瀬戸康史さんは、ご自身が演じたキャラクターのこと、撮影現場のこと、新垣結衣さんや瀬田監督のことなどについて言及されてます。王道感のあるインタビュー。

個人的には現場の皆さんの「夏帆さん評」に対する夏帆さんの受け答えがかなり可愛くてよかったです。

小宮山莉渚さんはオーディションのことや撮影中のエピソードなどについて言及されてます。小宮山さんも早瀬憩さん同様しっかりした受け答えで(小宮山さんが早瀬さんより2歳年上)ほんとに立派。今の若者はこんなにもしっかりしてるんですかね。自分の10代を思い返すと…ねぇ。

インタビュー最後に「映画を観た方へのメッセージ」があるんですが、作品の本質を突いてるような素敵な言葉で、ぜひとも読んでいただきたいなと思いました。

『少女は卒業しない』での好演で個人的に注目していた小宮山莉渚さんのインタビューが掲載されているのはかなり嬉しかったです。今後も頑張って欲しいです。

瀬田なつき監督インタビュー

原作の魅力や原作者のヤマシタトモコさんとのやりとり、撮影中のエピソードや共演者のことなど、ハッキリ言ってすべてが見どころならぬ読みどころのインタビュー。3ページにわたって掲載されてます。

撮影中のエピソードはそれはそれで安定におもしろいんですけど、監督だからこそ語れる「撮影に至るまで」の様々なエピソードや裏話は興味深く読みました。

特に原作者ヤマシタトモコさんから言われた(お願いされた)ことや、朝役のオーディションのこと、「あさのうた」の作詞作曲をした橋本絵莉子さん(元チャットモンチー)とのやりとりは、完全に秘話だと思うので読めてよかったです。

インタビュー記事の途中で撮影のオフショットが掲載されてるんですけど、これが実にいい。作中では共演してない役者さんが一緒に写真に収まっていて、自分の撮影がない時でも現場に来ていたのかな?なんて思ったり。

瀬田監督のインタビューでも撮影中の雰囲気の良さが感じられたので、このショットを見て納得。

コラム/羽佐田遥子

「わたしは、決してあなたを踏みにじらない」と題したライターの羽佐田遥子氏のコラム。

ヤマシタトモコ氏の雑誌インタビューの記事や原作漫画の言葉を引用しながら展開される寄稿は、原作『違国日記』に関することや槙生と朝の関係性などに言及されていて、とても興味深く読みました。

特に寄稿終盤の「他者を理解する」ということについての言及には、僕自身ハッとさせられたし、とても勉強になりました。

そして「悪意よりたちの悪い善意がはびこっている」という一文はとてもわかり味が深いし共感しかありませんでした。相手を理解してあげようとする傲慢さ、わかった気でいることの愚かさ、自分を戒める意味でもこの部分は定期的に読むべしと思いましたよ。

レンツ
レンツ

コラム自体が非常に興味深いものでしたが、この終盤のひと段落は特に読んでいただきたい。

本作『違国日記』を言語化してくれた羽佐田氏のコラムに出会えてよかったと思ったし、そして何より『違国日記』に出会えてよかったと感じさせてくれるコラムです。

巻末のプチ写真集

写真が1ページに1点ずつ掲載され、それが何と22ページにわたって続くという何とも贅沢なページ。このパンフレットの特徴的なページです。

コート紙で印刷されているので発色がよく、いつまでも見ていられるような出来映え。1点1点が大きいので、表情がわかりやすいのもグッドです。

葬式シーンや餃子シーン、そして終盤の海辺でのシーンなど、印象的な作中のショットだけじゃなく、オフショットも数点掲載されているのも嬉しいところ。「あさのうた」のオフショットは超青春でいい感じ。

レンツ
レンツ

映画『違国日記』をあらためて感じられるプチ写真集。ありがたい!

総評

一見シンプルに見えるけど実は凝られている表紙デザイン、シンプルだけどとても読みやすくセンスが感じられる中面デザイン。キャストインタビューやコメント、監督インタビュー、コラムなど充実した内容。『違国日記』の世界にまた浸れる巻末のプチ写真集もうれしい。

デザイン、内容ともにクオリティが高いです。物理的な質感もいいし、とてもオリジナリティのあるパンフレットです。

お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。

レンツ
レンツ

これが1,000円(税込)で購入できるとは!買って損なし!

本作『違国日記』を気に入ったそこのあなた、絶対に買ったほうがいいですよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

レンツをフォローする
邦画
レンツをフォローする
モエパン
タイトルとURLをコピーしました