理不尽な世の中への反逆者、代弁者として祭り上げられたジョーカーの前にリーという謎めいた女性が現れる。ジョーカーの狂気はリーとともに群衆へと伝播し、拡散していくが…
第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞するなど、世界的に大ヒットとなり、社会現象を巻き起こしたサスペンスエンターテインメント『ジョーカー』の続編。
トッド・フィリップス監督と主演のホアキン・フェニックスが再タッグを組み、ジョーカーが出会う謎の女リー役でレディー・ガガが新たに参加した本作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のパンフレットを紹介します!
全ページにジョーカー(ホアキン・フェニックス) or リー(レディー・ガガ)の写真が掲載。まさにフォリ・ア・ドゥなパンフレット!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
表紙デザイン
A4サイズ(210mm×297mm)のパンフレット。紙に厚みがあるので、しっかりとした手触り、というか手ごたえ。
表紙デザインはジョーカーとリーの全面ツーショット。下から煽り気味のショットがかっこいい。画になりますね。
裏表紙はアーサーが収容されているアーカム州立病院の独房(かな?)の窓から差し込む光。アーサーの心象風景なんでしょうか。とても美しいショット!
中面デザイン
第一印象は、重厚。
全面写真のページが多く、とても迫力があります。写真のクオリティはかなり高いです。
余計な装飾はなく、比較的シンプルなデザイン。その結果、写真の素晴らしさが浮き彫りに。
タイポグラフィや書体に工夫があり、シンプルではあるものの、デザイン性がしっかりとあるので、読んでいて飽きがこないです。
文字量、行間等のバランスが良いので、文字が読みやすいのもグッドポイントです。読みやすさというのはホントに大事。
全体的に『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の妖しくて美しい世界観が感じられるデザインのパンフレットですよ。
コンテンツチェック
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
トッド・フィリップス監督インタビュー、ホアキン・フェニックスとレディー・ガガのキャストインタビュー、スタッフインタビュー、7本のコラムなど、全44ページ。映画パンフレットとして押さえるところをしっかりと押さえた充実の内容で、読みごたえあります。
トッド・フィリップス監督インタビュー
続編が始動したきっかけ、どのような物語を描こうと思ったのか(個人的にはこれが知りたかった!)、ホアキン・フェニックスの素晴らしさ、レディー・ガガをキャスティングした理由、歌のパフォーマンスについてなどが語られています。
監督は「アーサーの中には常に音楽が存在している」と語っていて、これがこの作品の大前提としてあるのかなと。そこを突き詰めた結果、表現方法として問題の(?)パフォーマンスになったのかなと、個人的には思いましたよ。
そして、ホアキン・フェニックスのストイックさを物語るエピソードがとても良かったです。
あの病的な痩せ方の身体的な表現やタップダンスのパフォーマンスなど、ホアキンの演技はホント素晴らしかったですからね。
彼の真摯な役づくりがあったからこそ、本作は成り立ったんだと思いました。ホアキンの凄みを感じさせるエピソードは必読ですよ。
本作に関しては賛否両論があり、個人的にも前作『ジョーカー』ほどの面白さを感じられず、少しモヤっとしていたんです。でも、この監督インタビューのおかげで、いろいろと納得できたし、結構腑に落ちたんですよね。
本作を理解する一助になるトッド・フィリップス監督のインタビューはぜひとも読んでいただきたい。
本作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のことを深く知りたければ、読むべし!
ホアキン・フェニックスとレディー・ガガインタビュー
特に洋画のパンフレットでは、キャストインタビューが掲載されない場合があるんですけど、本パンフレットではホアキン・フェニックスとレディー・ガガのインタビューが掲載されているのでひと安心。
ホアキン・フェニックスはアーサーやジョーカーの心情的なことに言及してなくて、主に制作のエピソード的なことを語ってます。
一方のレディー・ガガのインタビューでは、自分が演じたリーのこと、ジョーカーへの思いなどを語っていて、個人的にはホアキンのインタビューより読みごたえがありました(笑)。
ガガのインタビューの最後のセンテンスで「ミュージカル」という言葉について言及しているんですが、そこは読んで欲しいです。本作を観る上で、もっとも大事なことなのかなと感じましたよ。
そして、トッド・フィリップス監督、ホアキン・フェニックス、レディー・ガガのインタビューページには、お三方それぞれに関するコラムが掲載されています。(それぞれの人物に対するコラムが同ページに掲載されているという面白い構成)。
トッド・フィリップス監督に関してはライター・編集者の稲垣貴俊氏が「ジョーカーを<解体>する-トッド・フィリップスと"男らしさ"の病」というタイトルで、ホアキン・フェニックスに関しては映画批評家の森直人氏が「笑顔にこびりつく絶望と狂気」というタイトルで、レディー・ガガに関しては映画批評家の児玉美月氏が「メタモルフォーゼとヴァルネラビリティのDIVA」というタイトルでそれぞれコラムを寄稿しています。(ちなみにメタモルフォーゼとは変身、ヴァルネラビリティとは弱さ、傷つきやすさという意味。)
監督・キャスト、それぞれの過去作を例に挙げながら展開されるコラムはどれも良かったんですが、特に森直人氏のコラムはおもしろかった。インセル(Incel)と呼ばれる弱者男性についての言及があるんですが、興味深かったです。
前作『ジョーカー』はまさにインセル=アーサーの物語。衝撃的な内容で、社会に良からぬ影響を与えてしまったのも事実。さて、本作は森氏の言うところの「責任を取ろうとするための続編」なんでしょうか。
充実のスタッフインタビュー
スタッフインタビューとして、スタッフのクロストークを含め全6ページ、総勢9名のスタッフのインタビューが掲載されてます。スタッフインタビューとしてはボリューミーです。
プロデューサー、撮影監督、美術、衣装、エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサー、ミュージック・スーパーバイザー、音楽など、本作の中枢を担った錚々たるスタッフのインタビューなので、様々な角度から本作を知ることができます。
本パンフレットを読まなければ知り得ないエピソードや裏話が掲載されています。例えば、トッド・フィリップス監督との原稿や脚本のやりとり、アーカム州立病院のセットやロケーションのこと、カメラワークや撮影に関することなどなど。
スタッフのこだわりが端々に見え、当然のことですが、プロフェッショナル魂を感じるスタッフインタビューでしたよ。
コラム
コラムは全部で7本。かなり多いです。
先ほど少し触れた稲垣貴俊氏、森直人氏、児玉美月氏のコラムのほかに4本掲載されてます。
映画監督で作家の森達也氏は「ジョーカーのジレンマとアーサーの願望」というタイトルで、精神科医で作家の春日武彦氏は「二人によって産み出される狂気」というタイトルで、翻訳家の中沢俊介氏は「道化師ジョーカー変容の歴史」というタイトルで、文筆家の長谷川町蔵氏は「『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でなぜアーサーとリーは歌うのか」というタイトルでそれぞれ寄稿しています。
コラムのタイトルを読む限り、すべて面白そうですよね。
っていうか、すべて面白いです。
個人的によかったのは春日氏のコラム。「フォリ・ア・ドゥ」というワードを解説されてます。「フォリ・ア・ドゥ」とは「妄想が他者へ伝染する事象」のことらしいですが、新興宗教を例えに出したり、家庭内でも生ずる可能性を提示したりと、かなり興味深い話が展開されています。
面白い、といってはいけないような内容ですが面白いです。
あと、コミック版を含めた「ジョーカーの歴史」について書かれた中沢氏のコラムもおすすめですよ。
おもしろいトリビアページ
パンフレット終盤に掲載されているトリビアと題したページも面白いです。
アーカム州立病院の音楽室や美術室のディテールに関することや、法廷のインテリアのこだわり、歌声は口パクじゃなくて生演奏だったとか、ホントにトリビアしてておもしろいですよ。
見開き2ページで展開。おまけページじゃなくてしっかりと作りこまれてます。とはいえ、あくまでトリビア。本パンフレットでいちばん気楽に読めるかも。
総評
下から煽り気味のショットがかっこいいジョーカー(ホアキン・フェニックス)とリー(レディー・ガガ)のツーショットが全面に配置された表紙、デザインはシンプルではあるものの、クオリティが高いジョーカーとリーのショットが全ページに使われている迫力のある中面。
トッド・フィリップス監督インタビュー、ホアキン・フェニックスとレディー・ガガのキャストインタビュー、スタッフインタビュー、コラムなど、全44ページの充実した内容。
本作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の世界を堪能でき、より深く理解できるような、デザイン・内容ともに素晴らしい、とても素敵なパンフレットです。
お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。
これが900円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。