流通業界最大のイベント「ブラックフライデー」前夜、大手ショッピングサイトの配送段ボール箱が爆発。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。巨大物流倉庫のセンター長に着任した舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とともに事態の収拾にあたるが…
日本アカデミー賞優秀助演女優賞を4度受賞した満島ひかりを主演に迎え、テレビドラマ『アンナチュラル』(2018)、『MIU404』(2020)を手掛けた塚原あゆ子監督と脚本・野木亜紀子が再びタッグ。両シリーズの世界線で展開される連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画『ラストマイル』のパンフレットを紹介します!
本編同様にエンタメ感のある王道パンフレット!萌えます!
ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。
では、『ラストマイル』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!
デザインレビュー
表紙デザイン
A4サイズ(210mm×297mm)のパンフレット。
表紙はティザービジュアルをそのまま使用。ティザービジュアルをそのままパンフレットの表紙に使うのは、最近では珍しいような気がします。作品の統一感を大事にしたんでしょうかね。
「LAST MILE」の英字が上下で切れています。これは縦の動きを表現しているので、おそらくベルトコンベアの動きをイメージしているのかなと感じましたよ。
裏表紙は本作のキーメッセージが書かれていたロッカー。清々しいので、これは「その後」の写真かな。
中面デザイン
基本的には、紙の白地をベースに、黒とオレンジの組み合わせ。この配色は本作に登場するショッピングサイト「デイリーファスト社」のコーポレートカラーです。この配色だけで『ラストマイル』の雰囲気が出ますよね。
掲載されている写真は角版。ページのノド部分(内側)にオレンジのデジタルチックな背景が敷かれていて、それがいいアクセントになってます。
全体的に文字は小さめ。もう少し文字にメリハリ(大小)があった方が紙面に動きが出て、読みやすさがアップしたんじゃないかなと個人的には思います。本作は静より動のイメージがあるので、紙面に動きが欲しかったですね。
コンテンツチェック
では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。
充実すぎるキャストコメント
映画パンフレット史上、こんなに多くのキャストコメントが掲載されたことがあったでしょうか?というくらいに多いです。
総勢28名!全18ページ(写真ページ含む)!
コメントが掲載されているキャストは次の通り。
<ラストマイル>
- 火野正平
- 宇野祥平
- 大倉孝二
- 酒匂芳
- 安藤玉恵
- 水澤紳吾
- 岩谷健司
- ディーン・フジオカ
- 阿部サダヲ
<アンナチュラル>
- 石原さとみ
- 井浦新
- 窪田正孝
- 市川実日子
- 竜星涼
- 吉田ウーロン太
- 飯尾和樹
- 望月歩
- 薬師丸ひろ子
- 松重豊
<MIU404>
- 綾野剛
- 星野源
- 前田旺志郎
- 金井勇太
- 永岡卓也
- 橋本じゅん
- 麻生久美子
そしてシークレットキャストが2名(袋とじ)。
すごい人数(笑)
インタビュー形式で掲載されている満島ひかりさんと岡田将生さんを入れると、総勢30名ものインタビューやコメントが掲載されてます。
本編の豪華キャストを踏襲したような大人数キャストコメント。錚々たるキャストのコメントが読めるだけでも買ったかいがあったなぁと、そんな風に思いましたよ。
キャストコメントの豪華さはパンフレットの特徴のひとつ!特筆すべき点ですね。
作品の理解度がアップするインタビュー
インタビューとして掲載されているのは、満島ひかりさんと岡田将生さん、塚原あゆ子監督、そして脚本家の野木亜紀子氏とプロデューサーの新井順子氏の総勢5名。
満島ひかり/岡田将生インタビュー
連続爆破事件というインパクトのある事件が描かれているんですが、本作は「お仕事映画」でもあるんですよね(野木亜紀子氏もインタビューで言っている)。
つまり、作品のことを語るということは労働のことを語ることでもあると思うんです。
満島さんは「極限までシステム化された現代社会のゾッとする寒々しさ」、岡田さんは「無自覚に享受している便利さの裏側の歪み」を脚本や作品から感じたようで、僕はひとりの労働者として共感しました。特に岡田さんの言葉は重い。
芸能人は特殊な感覚の持ち主なのかなと勝手に思っていたけどそんなことなくて、僕らと同じひとりの人間でひとりの労働者なんだと、当たり前ながら思いましたよ。
あと、仕事や人間関係に疲弊しているといった背景など、ご自身が演じた役について深く考えられているところにも感心しました。
一般企業に就職したことがないだろうに、なぜこの感覚かわかるのか。撮影前にかなり研究していたんでしょうね。
このインタビューを読んで、満島さんと岡田さんを身近に感じられたし、元々俳優として2人のことは好きでしたが、もっと好きになりましたよ。
塚原あゆ子(監督)/野木亜紀子(脚本)/新井順子(プロデューサー)インタビュー
塚原あゆ子監督と脚本の野木亜紀子氏はそれぞれ見開き2ページ、プロデューサーの新井順子氏は1ページでインタビューが掲載されてます。
塚原監督のインタビューでは「本作のコンセプトや本作で描いてみたかったもの」「満島ひかりさんと岡田将生さんの印象」「演出家としての注意点」などが語られていて、かなり読みごたえがあります。
特に塚原監督が「描いてみたかったもの」についての言及がとても興味深かったです。
経済活動の歪みや労働問題をとてもストレートに語られていて、いち労働者としてとても理解できるし心に響きました。
そして野木氏は労働問題にもう少し突っ込んでいて、どこが問題でどうすればいいのか、みたいなことを語っています。主人公をセンター長の舟渡エレナに据えた理由がわかります。
野木氏は労働問題に関して熱量高く語っていて、ひとりの観客として、ひとりの労働者として、読む方も熱くなってしまいました。労働問題に関して「関係ない人なんていない」という言葉、かなり響きました。
労働問題だけではなく「印象的だったシーン」や「塚原監督の演出の素晴らしさ」などにも言及されてるので、決して重いインタビューではないことだけは伝えておきますね。
インタビューとして、とてもおもしろいです(野木氏の明るさも素敵)。
プロデューサーの新井順子氏は、ご自身がどのように本作に関わってまとめ上げてきたのかという、プロデューサーとしての仕事を語っています。
流通業界を取材をしたり、上映時間に収まるように脚本の調整や変更をお願いしたり、キャスティングの調整など、『ラストマイル』制作の裏側のさらに裏側を知ることができ、プロデューサーの仕事って大変なんだとあらためて思いました。労働環境は大丈夫なのかしら。
プロデューサーのインタビューがパンフレットに掲載されることって少ないので、とても興味深く読みました。
『ラストマイル』制作の超重要人物であるお三方のインタビューは、制作の裏側だけではなく、本作の本質も見えてくるので、ぜひ読んでほしいです。
『アンナチュラル』と『MIU404』の全話紹介が嬉しい!
パンフレットの巻末の方に、ドラマ『アンナチュラル』と『MIU404』の全話紹介ページがあります。
本作『ラストマイル』は『アンナチュラル』と『MIU404』と同じ世界線で描かれたシェアード・ユニバースムービーなので、ドラマの全話紹介は作品の特徴をパンフレットに落とし込んでいる形になってます。
おまけ的な扱いのように感じますが、気が効いた素晴らしいコンテンツです!
ドラマを観ていた人にとっては懐かしく感じたり、忘れていたシーンを思い出したり(前田旺志郎さんと望月歩さんのことをこれで思い出した!)。ドラマをリアルタイムで観ていた僕としては全話紹介はとても嬉しい。
ドラマを観ていない人にとってはざっくりとどんなドラマだったのかを知ることができます。まぁ、本作を観てドラマに興味を持った方にはネタバレになってしまうので、全話紹介ページは読まずにドラマを観た方がいいと思いますが…。
総評
ティザービジュアルを使った表紙デザインに「デイリーファスト社」のコーポレートカラーを使った中面デザイン。
豪華なキャストコメントや塚原あゆ子監督をはじめとする制作の中心人物3名のインタビュー、『アンナチュラル』と『MIU404』の全話紹介など、充実の内容。
『ラストマイル』という作品が見事に表現されたエンタメ感のある素晴らしいパンフレットです。
お金を出して買う価値は十分すぎるほどにありますよ。
これが880円(税込)で購入できるとは!買って損なし!
本作『ラストマイル』を気に入ったそこのあなた、パンフレットのご購入をオススメしますよ。