朝井リョウ原作!稲垣吾郎主演!映画『正欲』パンフレットレビュー!

邦画

朝井リョウのベストセラー小説を、稲垣吾郎と新垣結衣の共演で映画化した作品『正欲』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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とてもシンプルなデザインのパンフレット。萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:182mm × 257mm(B5)
  • ページ数:36ページ
  • 発行権者:「正欲」製作委員会
  • 編集:ビターズ・エンド、岡崎優子、小竹亜紀
  • 写真:小岩井ハナ
  • デザイン:岡野登、柴田理子(Cipher.)
  • 印刷:三永印刷株式会社
  • 定価:1000円(税込)
パンフレット掲載内容
  • Introduction
  • Story
  • Cast profile & Comment
  • 人物相関図
  • Special 鼎談/岸善幸監督 × 稲垣吾郎 × 新垣結衣
  • 岸善幸監督インタビュー
  • Staff profile
  • Song/Vaundyコメント
  • 主題歌「呼吸のように」歌詞
  • Review/細谷美香(映画ライター)

岸善幸監督と稲垣吾郎さんと新垣結衣さんの鼎談(ていだん)、岸善幸監督インタビュー、キャストコメントとプロフィール、そしてレビューが1本と、うーん…やや物足りない内容。デザインは白地ベースでとてもシンプル。僕は嫌いじゃないです。

レンツ
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では、『正欲』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

シンプルな表紙デザイン

小説の表紙のイメージカラーを踏襲した紺色をベースに、水しぶき(?)を連想させる白い模様。中央上部に大きく配置された明朝体の「正欲」。その「正欲」の「欲」の字に少し掛かるように配置されたピンクの英文字「(ab)normal desire」。

シンプルなデザインですが、このピンクの英文字が紙面のアクセントになっていてかなり効いてますね。ちょっと艶っぽいというかエロティックというか性的な雰囲気が出ていていい感じ。

ちなみに原作小説(文庫版)の表紙はこちら。

表紙のイメージは踏襲されてますね。

裏表紙も表紙の絵柄が続いてます。現状のシンプルなデザインもいいですけど、表紙に配置されたピンクの英文字のような、何かアクセントになるものがあった方がいいような気がしたりしなかったり。

白地ベースのシンプルな中面デザイン

中面のデザインもシンプル。

白地をベースに、本文は基本的に黒。キャストの名前や役名には紺色。コンテンツタイトルにはピンクが表紙同様にアクセントととして使われています。黒×紺×ピンクの組み合わせで構成されてますよ。

写真はほぼ角版(四角)、そして文字数は少なめ。余白が十分にとられているので上品な紙面になっています。デザインとしてはおもしろみには欠けてるけど、本作はセンシティブな内容なので、あえて無難で落ち着いたデザインにしたのかもしれないですね。

少し物足りなさを感じるけど、余白を生かしたシンプルで上品なデザインはこの作品には合っているのかも。僕は嫌いじゃないですよ。

ピックアップコンテンツ

レンツ
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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

岸善幸監督 × 稲垣吾郎 × 新垣結衣 スペシャル鼎談

稲垣吾郎さんのいい意味でのマイペースさ、新垣結衣さんの真面目さがわかるとてもおもしろい鼎談でしたよ(稲垣吾郎さんか真面目ではないとは言ってないですよ)。岸監督は、まぁ、それなりに。

レンツ
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稲垣吾郎さんと新垣結衣さんのキャラクターがよく出ている対談で、おもしろかったですよ。岸監督は、まぁ、それなりに。

いわゆるマジョリティー側を演じた稲垣吾郎さんとマイノリティー側を演じた新垣結衣さん。おふたりの演じる上での温度差みたいなのが感じられて、そのおふたりのギャップがおかしかったです。

新垣結衣さんのインタビューを読むと、ホントに苦しかったみたいですよ。まぁ、夏月はギリギリでしたからね。ちなみに稲垣吾郎さんは楽しく演じられたらしいです(笑)。まぁ、いわゆる「普通の人」でしたからね、啓喜(ひろき)は。

俳優さんたちって、自分自身が知らない感情を乗せて演じることがあるわけじゃないですか、本作の新垣結衣さんや磯村勇斗さんたちのように。そりゃあ、悩みますよね。気持ちが重たくなりますよね。俳優さんって大変な職業なんだなぁと、新垣結衣さんのインタビューを読んであらためて思いました。

岸監督は新垣結衣さんにはいい意味で気を使ってたみたいです。ホントに難しい役所でしたからね。新垣結衣さんの闇度がこの作品の肝だったように個人的には思いますし(と同時に稲垣吾郎さんの普通度も重要)、テーマがテーマだけに、岸監督ご自身も表現する上でいろいろと難しいところあったんじゃないですかね。実際撮影中、表現が合っているのかどうか、確信が持てなかったみたいですから。マジョリティーの人間がマイノリティーの気持ちを完全に理解するのは難しい(っていうかそもそも自分がマジョリティーなのかも怪しいし…)。ホント、映像化するには難しい作品だとあらため思いました。

この鼎談はすごくおもしろくてよかったんですけど、もう少し文字数(ページ数)を増やして欲しかったです。ちょっと少ないかな。もっと読みたかったです。写真が結構大きく大胆に使われているんですけど(まぁそれはそれで悪くないけど)、その写真スペースの分、文章が削られているように感じます。いや、逆かな。そもそもインタビューが少ないから写真を大きく扱わざるを得なかったのかな。まぁ、どっちにしろ、この3人の鼎談はもっと読みたかったです。今の世の中で、関心度の高い「多様性」というテーマを扱っているだけに、3人の考えや思いをもっと深く知りたかったですよ。

岸善幸監督インタビュー

原作小説の魅力、映画のポイントやテーマ、キャスティングについて、インタビューに答えてくれてます。

レンツ
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ドキュメンタリーやドラマの演出、そして映画監督としてもご活躍されていて、経験値の高い岸善幸監督でも本作ではかなり苦労されたようですよ。

本作の重要なポイントである性的嗜好の捉え方が難しかったようで、最後までつかめなかったと語られています。

まぁ、確かに性的嗜好って、特に他人の性的嗜好なんてわからないですよね。そのわからないことを映像化しないといけないわけで、そりゃあ大変な作業ですよね。苦労しますよね。

例えばですよ、誤解を恐れずに言うと、猟奇殺人鬼の気持ちってわからなくはないじゃないですか。怒りや憎しみとかコンプレックスが根底にあるんじゃないかって想像がつくというか。その感情が歪んで逸脱して人を殺めてしまう。人を殺めたいと思うほどに人を憎んだことは無いけど、頼むから自分の前から消えてくれよくらいのことを思ったことは、皆さんありますでしょ?僕は、ある。

でも、これがしたいとかこれが興奮するとかこれが好きとか、他人の欲求や嗜好って、想像するのは難しいと思うんですよね。想像でわかることじゃないですよね。本能に近いというか。特に性的嗜好になるとなおさらですよ。自分の性的嗜好だってよくわからないのに(わかってはいるけど蓋をしてるだけかもしれないけどね)。

岸監督がインタビューで触れられている「夏月が太ももを閉じる」描写も悩まれたみたいですけど、そのシーンの水の表現も含めて素晴らしいシーンだったなと僕は思いました。絶妙だったなと。

キャスティングに関しても語られていますが、稲垣吾郎さん、新垣結衣さん、磯村勇斗さんの岸監督評はかなり納得感がありましたよ。キャスティングはバッチリとハマってたように個人的には思います(原作は未読なので、本作のキャラに合っていたという意味で)。

佐藤寛太さん、東野絢香さんを含めた主要キャスト5人の中で唯一、オーディションで決まったのが佐藤寛太さんらしいのですが、エピソードがちょっとおもしろかったです。なんか、配役のイメージ通りで(笑)。本作での存在感は抜群でしたよ、佐藤寛太さん(と東野絢香)。個人的には今後も注目していきたい俳優さんです。

そして、岸監督が本作のテーマについても語られてます。

「多様性」の意味を問いかけるだけじゃなく、そもそも人間は多面性を持って生きているわけで、いわゆるマジョリティーと言われる側の人間が「果たして正しい感覚を持っているのかな?」と自分に問いかける、自分に疑いの目を向けさせるような作品にしたいと思って撮られたみたいです。

この考え方は目から鱗でした。「マイノリティー」に意識が行きがちだけど、あえて「マジョリティー」の感覚に目を向けさせ、果たしてそれって普通なの?正しいの?って自分自身を疑わせる。そういう意味で、普通代表だった啓喜(稲垣吾郎)が最終的には普通には見えなくなってくるという流れも見事でしたよ。

詳しくは岸監督のインタビューを読んで欲しいですが、僕は本作を観て、自分を疑う気持ちになったし(僕がマジョリティーの人間なのか定かではないけど)、監督の意図や思いは伝わる作品になっているんじゃないかなと、僕は思いましたよ。

何がマジョリティーで何がマイノリティーなのか、人間って両方持ってると思うんですよね。性的嗜好だっていろいろじゃないですか。理解してもらえるものもあればされないものもある。まぁ、どんな性的嗜好を持っていてもいいじゃないですか。ただひとつ言えることは、他人に迷惑をかけちゃいけないってことだけだと思うんですよね。それさえ守れば、あとは自由じゃないですか。

レビュー/細谷美香(映画ライター)

レンツ
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このパンフレットでもっとも文字がぎっしりと詰まっているページです。読み応えありました。

自分の想像力の限界を突きつける

というタイトルで書かれた細谷美香さんのレビュー。

とてもわかりやすいレビュー。本作のポイントとなるセリフを引用しながら展開されるので、そのシーンが頭に浮かんで映像化されて、より理解度が増すんですよね。

そして、細谷さんのレビューを読んであらためて思うけど、夏月と佳道、大也と八重子、このマイノリティーコンビが心を通わせてこの世知辛い世の中を生きていくという、他者とのつながりの大切さをあらためて感じました。

そしてマイノリティーであるはずの啓希が孤独になっていくという皮肉。

マジョリティーとマイノリティー。どっちが普通なんでしょうね。

ちょっと物足りないのでは(やや辛口)

うーん、ここはハッキリ言っときましょ。

レンツ
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パンフレットの内容が物足りないです。

まず、単独主演ができる稲垣吾郎さん、新垣結衣さんという人気俳優さんが共演しているのにお二人の単独インタビューが無いなんて、そりゃないでしょ。

そして、今や日本映画には欠かせない若手俳優ナンバーワンと言っても過言ではない磯村勇斗さん、本作で存在感抜群だった佐藤寛太さんと東野絢香さんのインタビューだって絶対に必要でしょ。みんな読みたいでしょ。

かなりセンシティブな内容で、今の世の中にとって非常にタイムリーといいますか、関心の高い内容だと思うので、なおさら演じた俳優さんたちがどのような思いで演じたのか、この作品をどのように考えているのか、知りたいじゃないですか。

まぁ、皆さん人気者ですから、スケジュールとか予算の都合とか、いろいろな理由はあるのかもしれないですけど、主要人物を演じた俳優さんたちの言葉が聞けないなんて(コメントとしてはちょこっと載ってますが)寂しすぎやしないですかい?

岸監督と稲垣吾郎さんと新垣結衣さんの鼎談はとてもよかっただけに単独インタビューが掲載されていないのは実に残念。

そして、もうひとつ。なぜ原作者の朝井リョウさんのコメントが無いのでしょうか。最近だと『スイート・マイホーム』の原作者・神津凛子さん、『アンダーカレント』の原作者・豊田徹也さんはパンフレットにコメントを寄せてます。

今年(2023年)2月に公開された朝井リョウ原作の『少女は卒業しない』(めちゃくちゃ素敵な作品!オススメ!)のパンフレットでは朝井リョウさんのコメントが掲載されてます。さらに主演の河合優実さんと対談までしちゃってるし。もしかして、朝井リョウさんが本作の出来に納得してないのかな?って勘ぐりたくなります。

そして最後(まだあるのかい!)。プロダクション・ノートが無い。うーん、プロダクション・ノートが無いパンフレットってなかなか珍しいですよ。僕たちパンフレッター(パンフレットを好んで買う映画好きの人のこと。今僕が勝手に考えた)は、撮影の裏側って知りたいんですよね。こんな苦労があったんだとか、こんな奇跡があったんだとか。

ついでにコラムも無いし。

内容としてはちょっと薄いですよね。本作で描かれた「多様性」はとても大事なことだし、今の世の中でとても重要なキーワードでもあると思うんですよね。せっかくパンフレットを販売するならもう少し深いところまで突っ込んで制作して欲しかったな。

総評

余白を生かしたシンプルで上品なデザインはいいと思うけど(僕は好き)、内容が薄めで、トータル的には厳しいですね。岸監督と稲垣吾郎さんと新垣結衣さんの鼎談が良かったところかな。紙はしっかりしているので安っぽい感じはしませんが、これが1000円(税込)ってのは、うーん、ごめんなさい。ちょっと高いかな。稲垣吾郎さん、新垣結衣さん、磯村勇斗さんって個人的に大好きな俳優さんなので、より残念度が高くなっちゃいました。

僕個人はデザイナーなので、クリエイターの方々の頑張りはわかるし(おそらく時間がない中で全力で作られたのでしょう)、クライアントの意向に沿って制作しないといけないので(クリエイターさん自身が納得できるものではないのかもしれません)、全否定はするつもりは毛頭ないです。ただ、ひとりの購入者としての率直な感想を書かせてもらいました。

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映画のパンフレットとしては、物足りないです。

『正欲』がおもしろかった方、稲垣吾郎さんファンの方、新垣結衣さんファンの方にはオススメできるパンフレットです(写真が大きく扱われているので)。

本作『正欲』を気に入ったそこのあなたには、オススメできるかな。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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