斎藤工監督作品!映画『スイート・マイホーム』パンフレットレビュー!

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愛する家族と新居に移り住んだ直後から不可解な出来事が起き始める…というサスペンスホラー作品『スイート・マイホーム』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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表紙と裏表紙の仕掛けをはじめとする凝ったデザインが素敵なパンフレット。萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:148mm × 210mm(A5)
  • ページ数:54ページ
  • 発行:東京テアトル株式会社
  • 編集:株式会社キネマ旬報社
  • 執筆協力:石井隼人
  • デザイン:大島依提亜、中山隼人
  • 印刷:株式会社北斗社
  • 定価:1,000円(税込)
パンフレット掲載内容
  • Introduction
  • Story
  • キャストコメント
  • 上海国際映画祭リポート
  • インタビュー/斎藤工監督
  • スタッフコメント
  • コメント/神津凛子(原作者)
  • 深読み対談/こがけん × 松崎健夫(映画評論家)
  • Production Notes

キャストコメント、スタッフコメント、斎藤工監督インタビュー、原作者・神津凛子さんのインタビューなど、抑えるべきところはしっかりと抑えられている安定の内容。お笑い芸人・こがけんさんと映画評論家・松崎健夫さんの異色(?)対談というオリジナリティのあるページが組み込まれているのはポイント高いです。内容は無難な感じですが、デザインがかなりイケてます。

レンツ
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では、『スイート・マイホーム』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

仕掛けがある大島依提亜さんらしい表紙デザイン

デザイナーの大島依提亜さんらしい凝りに凝った表紙デザイン。

4箇所がくり抜かれていて、その穴から次の扉ページにある「SWEET MY HOME」という作品名がのぞくというおもしろい仕掛け。その穴の縁には「紙が破れた感じ(破れた紙がちょっとめくれた感じ)」に見えるようなデザインが施されていて、破れた感じがリアルに表現されてます。

「SWEET MY HOME」の文字の入れ方が屋根をモチーフにしているように見えるのは気のせいかな。いや、気のせいじゃない。狙ってますね。

ちなみに裏表紙にも同じ仕掛けが。

表紙だけではなく裏表紙まで加工するという力の入れよう。このような凝ったデザインは個人的には大好きです。

そして、極めつけは背表紙。(撮影しやすいように横向けにしています。)

背表紙は4mmほどで薄いんですけど、作品名「SWEET MY HOME」が入っています(それも英語を縦書きで入れるというセンスの良さ!)。細部の細部まで手を抜いてない感じが好感度高いです。

不穏さが漂う大胆な中面デザイン

中面のデザインも凝ってます。

冒頭のカラー写真ページのあとに続く本文はなんと、黒い紙に銀刷りという思い切った大胆なデザイン。インパクト大です。最近では映画『BABYLON バビロン』のパンフレットで金刷りページがありましたけど(これがまたかっこいい!)、それと同じくらいのインパクト。

銀がグレーのようにも見えるので、ちょっと暗くて不穏な感じがします。不穏で不気味な作品のイメージを表現するために黒と銀を組み合わせたんでしょうけど、見事です。

文字だけではなく、写真も銀刷り。1色刷りって結構難しいんですよね。写真の明るい部分と暗い部分のメリハリをしっかりつけないとディテールがつぶれてしまって暗くなってしまうんです(シャドウ部分が強いとつぶれてしまう)。このパンフレットに掲載されている顔の表情や背景は細かいところまではっきりと認識できているので、画像補正の技術がしっかりしているんでしょうね。写真のクオリティが高いです。

細かいところを見ていくと、キャッチコピーやキャストの名前などのちょっと大きめな文字に加工がされているんです。ひと文字ごとに長体(文字の左右がつぶれて細く見える)や平体(こちらは上下につぶれて平べったく見える)の処理がされているんですね。この加工によって文字の並びがでこぼこして動きが出て不気味さが増長されてます。細かいところまでデザインされているのはさすが。

大胆でかつ繊細なパンフレットデザイン。素晴らしいのひと言です。

秀逸なページネーション

詳細を書き過ぎると実際に読んだときに驚きがなくなってしまうのでほどほどに書きますが、パンフレットのページネーション=流れがいいんですよね。

レンツ
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パンフレットの全体的な流れが秀逸なんです!

表紙の仕掛けでオッと思わせて、ページをめくっていくと「スイート・マイホームへようこそ」と本作へ誘うかのような窪田正孝さんの不穏な写真がお待ちかね。その後に作中のカラー写真が掲載されているんですけど、そのカラー写真が破られてるような演出(デザイン)がされているんです。凝ってます。

そのカラー写真のページが終わるとなんと、黒い紙に銀刷りで間取り図がドン!と出てきます。突然間取りですよ?不穏さ全開。

さらに読み進めると、キャストコメントのあとに、メインキャストの顔のアップ写真がこれまたドン!ドン!ドン!ドン!と出てきます。このアップ写真、インパクトがあってびっくり(撮影は斎藤工監督)。顔のアップのショットは本作の特徴のひとつではありますが、パンフレットでもやってくるとは。ホラーっぽい演出がおもしろいです。かなり効いてます。

ひとつひとつのデザインだけじゃなくて、全体としてうまく本作の世界観がパッケージされているデザイン。作品の不穏な感じ、ホラーな世界観にマッチしたデザイン。クオリティ高すぎでしょ、このパンフレット。

ピックアップコンテンツ

レンツ
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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

充実のキャストコメント

主演の窪田正孝さんをはじめとする主要キャスト(蓮佛美沙子さん、奈緒さん、窪塚洋介さん)は1ページずつ、脇を固めたキャストの皆さん(7名)のコメントが4ページにわたって掲載されています。全8ページ。

コメントを寄せているキャストの皆さんは、作品のことについてというより(もちろん作品のことも語られてますが)、斎藤工監督のことについて語られています。皆さんのコメントを読むと、かなり撮影現場の雰囲気が良かったようですね。

レンツ
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斎藤工監督の作り出した撮影現場の雰囲気が絶賛されてましたよ。

斎藤工さんは俳優もされているので(っていうかそっちが本業か)俳優さんたちの気持ちがわかるんでしょうね。俳優さんたちが気持ちよく演技ができる環境や雰囲気作りに長けているんでしょうね。ほとんどのキャストの皆さんがやりやすかったと語っています。(撮影の芦澤明子さんのコメントが撮影現場の裏側を端的に表現されていて良かったです。)

俳優さんたちに対してだけではなく、スタッフの皆さんにもいろいろ配慮していたようですよ。

「スタッフの皆さんの名前がわかるように名札を付けていた」(奈緒さん談)とか「スタッフも演者も健康的で創造性を最大限に発揮できる環境を目指していた」(中島歩さん談)とか、このようなコメントを読むと、チームワークの良さであったり過酷な労働を強いてない感じがわかります。個人的には斎藤工さんのイメージが爆上がりしました。

あとは、ほとんどのキャストは斎藤工さん自身が声を掛けたようです(子役の磯村アメリさんはオーディションみたいですが)。撮影の前段階で、登場人物にハマる俳優さんのイメージは湧いていたんでしょね。確かにみんなハマってたように思いました(個人的には蓮佛美紗子さんはハマり役だったなぁ)。

ちなみに子役の磯村アメリさんのコメントは可愛らしくて面白かったです。窪田正孝さんの演技が凄すぎて心配になっちゃったとか、可愛すぎでしょ。僕が読んだことのあるパンフレット史上、もっとも若いキャストコメントだと思います。

斎藤工監督インタビュー

斎藤工監督の映画撮影に真摯に向き合う感じや、穏やかな人柄が滲み出ているとても良いインタビューでした。

レンツ
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斎藤工監督の映画撮影に対する姿勢がよくわかるインタビューでしたよ。

背伸びしないで自分がやれることを最大限やる。その上で難しいことは周りに頼って進めていく。ご本人は「身の丈」とか「白旗」という言葉を使ってましたが、みんなで作り上げていくというチームワークを大切にしていたように感じました。

斎藤工監督のインタビューを読むと、キャストやスタッフに対するリスペクトを感じられるし、そのリスペクトを感じたからこそキャストやスタッフの皆さんは斎藤工監督を賞賛するコメントを寄せたんでしょうね。

撮影に関しては、自分の考えはしっかりと持ちながらもそこに固執しないで、より良いものを作るためには柔軟に対応するという、頭の柔らかさを持ち合わせているんです。つまりは周りの意見も取り入れてるってこと。なんて人間ができているんでしょう。

男前だし穏やかだし柔軟性もある。俳優はできるし、映画も撮れる。この方はいったい何を持ち合わせてないんでしょうか。

斎藤工さんの好感度爆上がりのインタビューでした(笑)。

こがけんさんと松崎健夫さんの対談がおもしろい

このパンフレットにはコラムが無いんですけど、この対談がコラム代わりなんでしょうかね。かなり読み応えありました。

まず、こがけんさん。作品をとても細かいところまで観ていて感心しちゃいました。

確かにこがけんさんって映画のシーンを切り取ったものまねネタがありましたよね。「こがけんシネマクラブ」というトークライブを開催していたり、「金曜ロードショー」のナビゲーターをやっていたり、実は映画関係の活動も多いようです。だからなのか、僕が言うのはおこがましいですけど、着眼点が素人っぽくなくて、映画評論家の松崎健夫さんとも普通に対談できているんですよね。すごい。

過剰すぎない演出であったり、映像だからこそ効いた演出であったり、斎藤工監督ならではの映像表現や、窪田正孝さん演じる清沢賢二の背景や人物描写とか、広範囲に、そして深く語られていて、かなり興味深い対談です。

出演していないはずの斎藤工さんが実は出演しているんじゃないかとか、実は福山雅治さんが関わっているとか、トピック的なことにも触れられていて、これがまたおもしろかったです。

実は本作品に福山雅治さんが出資しているようなんですね。賛同した俳優さんが出資して自由度の高い作品を製作する。この流れができてくれば日本映画にも新しい波が起こるんじゃないかということをお二人は語られてます。海外ではレオナルド・ディカプリオとかブラッド・ピットとかがプロデューサーとして作品に関わったりしてますもんね。ほんと、この作品がきっかけになったらいいなぁなんて僭越ながら僕も思います。

総評

デザイナー大島依提亜さんの大胆かつ繊細なデザイン。キャストコメントやスタッフコメント、斎藤工監督インタビューなど、そつのない内容。さらにお笑い芸人のこがけんさんと映画評論家の松崎健夫さんの異色?対談というオリジナリティのあるページが組み込まれているのもグッドポイント。デザイン、内容ともに満足度の高いパンフレットです。これが1,000円(税込)で購入できるなんて!

レンツ
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読んで良し、見て良し、触って良しというひと粒で3度おいしいパンフレット。買って損はありませんよ!

『スイート・マイホーム』がおもしろかった方、一風変わったパンフレットが好きな方、斎藤工さんが好きな方にはドンピシャなパンフレットです。

本作『スイート・マイホーム』を気に入ったそこのあなた、オススメいたしますよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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