真木よう子主演!映画『アンダーカレント』パンフレットレビュー!

邦画

ある出来事をきっかけに、「アンダーカレント(心の奥底に沈めた本心)」と向き合うことになる…という豊田徹也のロングセラー長編漫画を実写映画化した作品『アンダーカレント』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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デザイナーの大島依提亜さんらしいオシャレでセンス溢れるデザインのパンフレット。萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:148mm × 210mm(A5)
  • ページ数:36ページ
  • 発行権者:(株)KADOKAWA
  • 発行・編集:(株)ムービーウォーカー
  • 編集:小川啓太(ムービーウォーカー)、望月麗奈(サンクレイオ翼)
  • デザイン:大島依提亜、中山隼人
  • 写真:木村和平
  • 印刷:三永印刷(株)
  • 定価:900円(税込)
パンフレット掲載内容
  • Introduction
  • Story
  • Character Diagram/相関図
  • Cast/キャスト紹介
  • Special Talk/主演:真木よう子 × 監督:今泉力哉
  • Staff/スタッフ紹介
  • Comment/原作者:豊田徹也
  • Review/森直人(映画評論家)
  • Review/吉田大助(ライター)
  • Production Notes

真木よう子さんと今泉力哉監督の対談、原作者である豊田徹也さんのコメント、キャスト(キャラクター)紹介、そしてレビューが2本と抑えるべきところはしっかりと抑えられている安定の内容。無難な内容ではありますが、デザインはかなりイケてます。

レンツ
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では、『アンダーカレント』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

大島依提亜さんらしいオシャレな表紙デザイン

デザイナーの大島依提亜さんらしいオシャレで凝った表紙デザイン。

スリーブのような透け感のある紙に刷られている水中に沈んだ真木よう子さんのアップ写真。それを開くと、水中で少し目を開けた真木よう子さんの上半身の写真。

透け感のあるスリーブと本体の写真の重なり具合いがとてもドラマチックで素敵。(この写真だとわかりづらいですが、雰囲気はかなりイイ!)

上部に配置されたスミ文字の「undercurrent」のロゴ(このロゴが絶妙にイイ!Iyo Yamauraさんデザイン)がまた素敵。気持ちの浮き沈みを表現しているような「d」と「t」の上下に伸びた縦棒が心地いい。

そして、水面と水中の境目を表現しているのか、スリーブ部分に印刷されているロゴが滲んだようなデザインに。ディテールにもこだわっていてニクいです。

裏表紙も同じく真木よう子さん。

こちらは水面から顔を出してるカット。表紙同様に写真の重なり具合いが映画的でいい感じ。抜群。

この表紙、裏表紙のデザインだけで買って良かったなって思わせてくれます。

シンプルなんだけどオシャレさが漂う中面デザイン

中面のデザインも凝ってます。

水色の紙に紺と銀の2色刷り。銀を使うあたりはさすが。オシャレ度がグッとアップします。

A5サイズで小型ですが、余白がしっかり取られていて文字は読みやすいです。

全体的なデザインはとてもシンプル。余計な装飾を施さない潔さは好感度高いです。僕だったら本作の舞台でもある銭湯の要素を取り入れたデザインをしちゃいそうだけど、そこが僕のような平凡デザイナーと大島依提亜さんとの差か(っていうか比べるのが失礼か)。

本文はオーソドックスな明朝体を使用していますが、「Introduction」や「Cast」などのコンテンツタイトルには銀刷りの筆記体が使われていて、それがいいアクセントになっています。

このパンフレットで唯一、相関図が銭湯っぽいデザインになっています(銭湯にありがちな床の水色のタイルを模倣している、と思う)。パンフレット全体のデザインはシンプルなので、このような遊びのあるページが組み込まれているのは変化があっていいですね。

シンプルなんだけどオシャレでセンスを感じさせる素敵なパンフレットデザイン。素晴らしい。さすがッス。

ピックアップコンテンツ

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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

真木よう子 × 今泉力哉監督インタビュー

原作は既読でかなり漫画に精通している真木よう子さんと、漫画原作の映画(『鬼灯さん家のアネキ』『ちひろさん』)を撮ったことのある今泉監督。2人とも原作漫画をリスペクトしつつ、より良いものを作ろうと撮影に臨んでいた2人のコンビネーションの良さや信頼関係が垣間見られる素敵な対談でした。

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2人のキャラクターがよく出ている対談で、おもしろかったですよ。

漫画原作の『アンダーカレント』を映像化するにあたって2人が撮影にどう向き合っていったのか、真木よう子さんの今泉監督評、キャスティング、ラストシーンの脚本について、「人をわかるって、どういうことですか?」という本作のテーマに対する考えなどなど、いろんな角度からのインタビューに答えてくれていて、かなり読み応えがあります。

物事をズバッと言う真木よう子さんと、繊細そうな今泉監督(真木よう子さんが繊細ではない、とは言ってませんよ)の人柄がよく現れていて、それがまた微笑ましいんですよ。

「漫画の実写映画化はして欲しくない」なんてストレートに言っちゃうところは何だか真木よう子さんらしくておもしろかったし、漫画に対する認識のズレが無いか真木よう子さんに確認して調整しながら撮影していたという今泉監督らしさというか気づかいというものが垣間見られたり。

今泉監督が煮詰まったときに真木よう子さんが手を差し伸べたエピソードはほんとに素敵。相性の良さを感じたし、お互いをリスペクトしている感じがしましたよ。作品から漂う穏やかな空気感みたいなものは、主演と監督の関係性の良さから出ていたのかもしれないですね。

あとは、キャスティングに関するところもおもしろかったです。作品の世界観を表現するために、あえて真木よう子さんと共演経験のある俳優さんを配置したらしいんですよね。オーディションとかキャラクターに合った俳優さんにオファーするのが通例なのかと思ったけど、こんなパターンがあるんですね。びっくり。

それを踏まえての真木よう子さんと永山瑛太さんの海辺でのシーンのエピソードはおもしろかったです(『最高の離婚』のコンビ。このドラマおもしろかったなぁ)。お互いを知っているからこそあの印象的なシーンが成り立ったんでしょうね。

「人をわかるって、どういうことですか?」という、本作のテーマに対するお2人の回答もめちゃくちゃ興味深ったです。特に真木よう子さんの答えはなんだか頼もしかったですね。近くにこんな人がいたら、僕はうれしい。詳しくは、買って読んでね。

主演と監督の対談って、めちゃくちゃいいですね。おもしろい。もちろん1人ずつのインタビューやコメントもいいけど、対談ってその人の人となりみたいなものがよく見えるんですよね。自が出る、みたいな。映画パンフレットは対談形式をマストにして欲しいな。

原作者・豊田徹也コメント

少し気難しいところがあるようにも感じられたけど、とてもユーモアがある素敵なコメントでした。

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豊田徹也さんって、こんな感じの方なんですね(良い意味で)。

古臭いプロットだの、絵柄が地味だの、かなり自虐的にご自身の作品を評価していたのは笑えました(笑)。もちろんどこまで本心で言っているのかわからないけれど、何もそこまで言わなくても…まさにユーモアですよね。

今泉監督との出会い?のエピソード、というか表現が独特で、これまた笑えました。アフター6ジャンクション(ライムスターの宇多丸さんがパーソナリティをつとめるラジオ番組。通称アトロク。現在はアトロク2)というラジオ番組に出演していた今泉監督の印象が強烈だったそうで。それがきっかけで今泉監督の作品を観たらしいんですよね。このアトロクを聴いてなかったら『アンダーカレント』の実写化は実現されていない可能性があるわけですから、これはもう運命としか言えないんじゃないですかね(大げさ)。奇跡の映画とも言えるんじゃないでしょうか(大げさ)。

豊田さんは原作の映像化にあたっては、読者ががっかりしないように撮って欲しいという要望をしたようです。作品は読者のもというお考えのようですね。なんだか、原作者がこのようなコメントをしてくれるのは、原作を愛してやまない方にとっては嬉しいんじゃないですかね。

レビューは2本

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森直人さんは今泉監督について、吉田大助さんは原作漫画や本作について執筆されています。

「アンダーカレント」を見つめる眼力、それは今泉力哉の本質である

というタイトルで書かれた森直人さんのレビュー。

『アンダーカレント』の世界観と「今泉監督らしさ」の相性の良さ(森さんは共振という言葉を使ってましたが)や、と同時に原作者・豊田徹也さんと今泉監督のカラーの違いについて書かれていて、かなり分かり味が深いコラムで、個人的には納得感がありました。

『アンダーカレント』の内容は、人間の心の奥底にある本心と向き合うというとても繊細な物語。今泉監督は繊細な人物描写や人間模様を丁寧に撮る監督代表みたいに個人的には思っているので(「恋愛劇の名手」と語られることが多いらしいです)、本作の内容と監督との相性の良さは僕も感じてました。

そして森さんは、豊田さんと今泉監督の作家性に関してもめちゃくちゃわかりやすく書かれています。「重み」と「軽み」。「重み」のある豊田原作『アンダーカレント』を「軽み」のある今泉監督が撮る。「重み」と「軽み」の絶妙なバランスこそが本作の魅力なんだと、森さんのコラムを読んでこれまた納得。

今泉監督って、シビアな物語をポップとまでは言わないけど、ユーモアを交えながら撮るのが上手ですからね。直近だと『窓辺にて』とか(ちなみに『窓辺にて』のパンフレットデザインも大島依提亜さん)。本作もまさに今泉力哉節炸裂してます。

右か左かではなく、奥へ奥へと進む映画ならではのラストシーンの意味

というタイトルで書かれた吉田大助さんのレビュー。

原作者の豊田徹也さんが影響を受けたとする村上春樹作品との関係性(類似性)とか、今泉監督が選択した表現方法とか、原作には無い「その後」の物語を描いた意味とか、主に表現に関することが書かれていて、とても興味深かったです。

特に印象的なラストシーンについては、いろんな捉え方ができるので難しいところではありますが、個人的には吉田さんとはちょっと受け取り方は違いました。森直人さんもラストシーンについては言及されていましたが、僕は森さんの考えに近いかな。2人は違う方向に進んでるわけではなくて、同じ方向に進んでいると思うんですよね。微妙な距離感ではあると思うけど。

おふたりのコラムによって言語化され、本作に関するさまざまなことが個人的には腑に落ちた感じがしたし、理解度がアップしました。良きコラムでしたよ。

プロダクションノート

今泉力哉監督が本作を撮ることになった経緯や今泉監督と原作者である豊田徹也さんとの対面秘話など、映像化するに至った過程、そして本作の完全オリジナルとなるラストの描き方の経緯や原作にはなかった季節を取り入れた理由、キャスティングの過程、映像や衣裳に関する秘話などなど、かなりおもしろい内容でした。

キャスティングに関しては、真木よう子さんと今泉監督の対談のところでも少し触れられていましたが、プロダクションノートの方がより詳細に書かれています。

僕は原作未読なので、原作のキャラクターと俳優さんたちのハマり具合はわからないけど、本作の役柄には間違いなく合っていたと思います。真木よう子さんとの共演経験がある俳優さんをキャスティングする作戦は大成功だったんじゃないですかね。

他には、衣裳さんの「井浦新さんは何を着せてもかっこいいから困った」みたいなくだりは笑いました。そんなこと、ある?あるんでしょうね、カッコいい人には。まぁ、僕は逆に何を着せてもカッコよくないですけどねほっとけ。

総評

デザイナー大島依提亜さんらしいオシャレでセンス溢れる表紙デザインにシンプルで繊細な中面デザイン。主演の真木よう子さんと今泉力哉監督の対談、原作者である豊田徹也さんのコメントにレビュー2本。井浦新さんやリリー・フランキーさんなど他のキャストのコメントも読みたかったところではありますが、デザイン、内容ともに満足感は得られるんじゃないでしょうか。これが900円(税込)で購入できるなんて!

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真木よう子さんの素敵な表紙(と裏表紙)デザインと紺と銀の2色刷りのオシャレなデザイン。買って損はありませんよ!

『アンダーカレント』がおもしろかった方、オシャレなパンフレットが好きな方、もちろん原作漫画が好きな方にもドンピシャなパンフレットです。

本作『アンダーカレント』を気に入ったそこのあなた、オススメいたしますよ。

レンツ

映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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