映画パンフレットレビュー。松村北斗×上白石萌音W主演!三宅唱監督作品『夜明けのすべて』

邦画

パニック障害を抱えている山添くんとPMS(月経前症候群)で悩んでいる藤沢さん。心や身体に悩みを抱えている2人の男女の交流を描いた、瀬尾まいこ原作小説を三宅唱監督が映画化した作品『夜明けのすべて』のパンフレットを紹介します!

レンツ
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映画『夜明けのすべて』がマルっとわかる内容充実の素敵なパンフレット。萌えます!

ということで、まずはパンフレット制作に尽力された方々へのリスペクトを込めて、パンフレットの基本情報をどうぞ。

パンフレット基本情報
  • サイズ:190mm × 297mm(横型)
  • ページ数:40ページ
  • 構成・執筆:山元明子
  • デザイン:古山茉梨奈
  • スチール:岩崎真子
  • 企画:濱中さつき、伊野香澄(バンダイナムコフィルムワークス)
  • 発売元:株式会社バンダイナムコフィルムワークス
  • 印刷:株式会社ジャパン・スリーブ
  • 発行日:2024年2月9日
  • 定価:1,000円(税込)
パンフレット掲載内容
  • INTRODUCTION
  • STORY
  • 対談/松村北斗 × 三宅唱監督
  • 対談/上白石萌音 × 瀬尾まいこ(原作者)
  • キャストプロフィール&キャラクター紹介
  • スタッフプロフィール
  • プラネタリウムについて/唐崎健嗣(モバイルプラネタリウム監修)
  • 栗田科学株式会社 会社案内
  • KEY WORDS(キーワード)
  • プロダクションノート
  • コラム/SYO(物書き)
  • コラム/長嶋友里枝(アーティスト)
  • 夜についてのメモ

全体的にデザインはシンプルですが(良い意味で!)、写真は多めで内容は充実。とても素敵なパンフレットです!

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では、『夜明けのすべて』のパンフレットを詳しく見ていきましょう!

デザインレビュー

表紙デザイン

山添くん(松村北斗)が藤沢さん(上白石萌音)に髪の毛を切ってもらうという、とても印象的なシーンが表紙全面に。

まな板の上の鯉のような(?)無の表情の山添くんと真剣な藤沢さんの表情が実に微笑ましいです。映像だとここまでハッキリと2人の表情は確認できないので、静止画(写真)としてあらためて2人の表情を見るとおかしみがありますよねー。すごく良い写真。

レンツ
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めちゃくちゃ良い写真!2人の表情がたまらないです(笑)

2人の距離がグッと縮まった重要なシーンなので、表紙全面に使われるのは納得。

中面デザイン

白地ベースで文字は紺。書体は主に明朝体が使われています。写真は角版(四角)で、結構多めに掲載されてます。全体的にシンプルで落ち着いたデザインになってますよ。

黒い文字ではなく紺の文字が使われているのがポイント。紺文字にすることによって紙面が重く堅くなることが避けられ、紙面で多用されている(青っぽい)グレーとの組み合わせによって軽くてスタイリッシュな雰囲気に。紺とグレーの組み合わせは「夜明け」を意識したのかな。良い配色です。

シンプルなデザインのページが多いですが、「プラネタリウムについて」「栗田科学株式会社 会社案内」「KEY WORDS」のページは切り抜き写真やイラストが配置されていて、可愛らしいデザインになってます。

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ちなみに栗田科学株式会社とは、科学工作玩具の開発・製作・販売・修理などを行っている会社で、山添くんと藤沢さんが勤めている会社です。雰囲気が良くて素敵な会社なんですよ。

パンフレットの作りとしては、紙は光沢のないマット紙で、厚みがあります。厚みがあるため、持った感じはしっかりとしていて、強度があります。読み込んでもヘタることは無さそうですよ。ガシガシ読めますよ!

コンテンツチェック

W主演の松村北斗さんと上白石萌音さんの単独インタビューは無いものの(ちょっと残念)、「松村北斗×三宅唱監督」と「上白石萌音×瀬尾まいこ(原作者)」の対談形式のインタビューやその他キャストのインタビュー、キャラクター紹介、プロダクションノートやコラムなど、そつのない内容で満足度は高いです。

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では、パンフレットに掲載されている内容をピックアップしてレビューしていきますね。

対談/松村北斗 × 三宅唱監督

松村北斗さんと三宅唱監督の対談。

2人の仲の良さといいますか、息の合った感じがわかる素敵な対談でした。お互いに意見を交わし合いながら撮影を進めていたようで、風通しの良い現場の雰囲気がうかがえましたよ。

そんな対談で特に印象的だったのは、松村北斗さん演じる山添くんがパニック障害の発作が起こったシーンについての言及。演技とはいえ、真剣に演じると本当に発作が起きてしまう可能性があるそうで、医療監修の方を呼んで撮影したという裏話は強烈でした。演じているつもりが実際に自分の身に起きてしまう可能性があるなんて…いやぁ、怖い、怖過ぎる。

役が憑依したかのような迫真の演技をされる俳優さんがいますけど、実は危険と隣り合わせなんですね。最近では『月』(石井裕也監督)で殺人鬼を演じた磯村勇斗さんも危なかったようなことをおっしゃってましたが、迫真の演技も良し悪しだなぁなんて。そういった意味でも、本作の撮影で、俳優さんを守るために医療監修の方を現場に入れるという三宅唱監督の気遣いは素晴らしいですね。

最近ではインティマシーコーディネーター(性的なシーンやヌードシーンの撮影の際、俳優と監督の間に入って調整する人)が入ったりして(昔から入ってたのかな?)、俳優ファーストといいますか、コンプライアンス的なこともあり、撮影現場も少しずつ変わってきているのかなと思いました。

…と、ちょっと脱線しちゃいましたが、山添くんのパニック障害のシーン以外のシーンこともいろいろと語られていたり、山添くんというキャラクターを作り上げる過程みたいなことも語られていたり、おもしろい対談になってます。ホント、お二人の関係性の良さがわかりますよ。

対談/上白石萌音 × 瀬尾まいこ(原作者)

上白石萌音さんと原作者である瀬尾まいこさんの対談。

主に上白石萌音さんが演じた藤沢さんのことについて言及されてました。上白石萌音さんは役づくりとして、普段から生理前と生理中の心と身体を観察していたようで、藤沢さんというキャラクターに真摯に向き合っているところはかなり好感が持てました。

そんな上白石萌音さん演じる藤沢さんを瀬尾まいこさんは大絶賛。原作者が大絶賛してるってことは、もう上白石萌音さんは藤沢さんで、藤沢さんは上白石萌音さんってことですよね!素晴らしい!なんのこっちゃ!

…他には、瀬尾まいこさんと娘さんが撮影現場の見学に来たときのことなどのほっこりエピソードも良かったけど、個人的に良かったのは、というか驚いたのは、プラネタリウムのくだりがオリジナルの設定だったということ。物語的にあまりにもハマっていたので、全然違和感なかったです。『夜明けのすべて』というタイトルから星空を連想して、プラネタリウムに繋がったんでしょうかね。原作既読の方はこの設定をどう感じたのか気になるところ。

そして、このプラネタリウムのオリジナル設定も含めて、原作改変を原作者である瀬尾まいこさんが褒めていたのもすごく良かったです(終わり方も原作と違ったみたい)。某漫画の実写化をめぐる悲劇があっただけに、なんだか安心感が半端なかったです。

あとは、原作にはあるけど映画では採用されなかったシーンについても言及されてまして、それはそれで勇気があるような。実にフェアなことだと思って感心しちゃいました。原作者は映画を、映画制作側は原作を、お互いにリスペクトし合ってるのは健全で素敵!

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松村北斗さんと三宅唱監督の対談同様、上白石萌音さんと瀬尾まいこさんの対談も良かったですよ。ただね、ぜいたくを言わせてもらうなら松村北斗さんと上白石萌音さんの対談も読みたかったです…。

おもしろい!キャラクターの裏設定

個人的に読んでいてもっともおもしろかったのは、脚本の和田清人さんと三宅唱監督のキャラクター紹介、というかキャラクターの裏設定。

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この裏設定はめちゃくちゃおもしろい!

例えば山添くんは3兄弟の次男坊だったとか、藤沢さんのお父さんは藤沢さんが3歳の頃に病死してその後は母子家庭で育ったとか、山添くんの彼女の千尋(芋生悠)は帰国子女だったとか。こんなにも深くキャラクターの背景を設定していただなんて驚き(原作小説では書かれているのかな?)。かなり詳細に書かれていておもしろいです。この裏設定を役者さんたちは知って演技していたんでしょうかね。非常に気になります。

ただね、この裏設定が書かれた文字が読みづらいんですよ。薄めのグレーの上に白い文字で書かれているのでホント読みづらい。もう少し背景のグレーを濃くする選択肢はなかったのかな。あと5%くらいでもいいので濃くしたら読みやすくなると思うんですよね。グレーを濃くしたところでデザイン的には何の問題もないと思うので、このグレーの濃度はもうひと検討して欲しかったです。

その他のオススメページ

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「プラネタリウムについて」「栗田科学株式会社 会社案内」「KEY WORDS」のページはオリジナリティがある良いページなので、ぜひとも読んで欲しいです!

プラネタリウムについて

本作のキーアイテムといいますか、キー装置?である移動式プラネタリウムの解説やプラネタリウムのシーンの裏話などが書かれています。

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プラネタリウムに興味がわいてくるし、なんだかプラネタリウムに行きたくなるような濃い内容になってます。

撮影では、プラネタリウムで映される星の角度や向きを正確に調整したり、外で天体観測をするシーンでは、その日(劇中では3月9日)の日没時刻やどの星がどの位置で見えるかを確認したり、かなりリアリティにこだわったようです。僕のような天体素人にとっては気にしないと思われるところでも、ディテールにこだわって撮影するのはさすが三宅唱監督といったところでしょうか。そんな真摯な姿勢にプラネタリウム監修の唐崎健嗣さんは感激したそうです。

あと、プラネタリウムの解説って別ブースの解説員席からするものらしいんですね。でも、劇中では藤沢さんは客席から星座の説明をしているんです。唐崎さんにはこのシーンがとても良く見えたようで、今後取り入れてみようと思ったみたいですよ。確かにお客さま目線で解説された方が臨場感や一体感が感じられるかもしれないですよね。映画きっかけで既存のものがアップデートされるのもなんだか素敵。

映画制作側はプラネタリウムを真摯に再現して、唐崎さんは映画のシーンを取り入れようとする。お互いをリスペクトしている感じがとてもいいですよね。

ちなみに僕の自宅から車で30分ほどに「多摩六都科学館」という科学博物館があるんですね。そこにはプラネタリウムもあるんです。近場にプラネタリウムがあるなんてこれも何かの縁。近々行ってみようかな。

栗田科学株式会社の会社案内

栗田科学株式会社の事業案内や沿革、従業員の紹介(裏設定)が書かれていて、とてもおもしろい内容になってます。架空の会社なのに会社案内って(笑)とても遊び心がありますよね。

ところどころに従業員の切り抜き写真が配置されていて、可愛らしいデザインになってます。このような遊び心のあるページはパンフレットのアクセントにもなるので良いですよね。

KEY WORDS(キーワード)

「パニック障害」「PMS(月経前症候群)」など、本作の重要なワードの説明が掲載されてます。簡単な説明ではあるけど、僕を含めて知らない人にとっては知るきっかけにはなる十分な内容。とても有意義なページだと思います。

このページは捉えようによってはちょっと重いページになりそうなんですけど、ところどころにイラストを配置させることによって紙面の重さを緩和させるという、気の利いたデザインになってるのもグッドです。絵具で描かれたようなイラストで、とても味があって良い感じです。

総評

全体的にシンプルで落ち着いたデザイン。対談形式のインタビューやキャストインタビュー、キャラクター紹介やプロダクションノート、コラム、そして本作ならではのオリジナリティのあるページもあり(「プラネタリウムについて」や「栗田科学株式会社 会社案内」など)、映画パンフレットととしてそつのない内容。厚めの紙を使用しているので、物理的な作りもしっかりしています。

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これが1,000円(税込)で購入できるとは!安い買い物!

原作小説ファンの方、松村北斗ファンの方、上白石萌音ファンの方、映画『夜明けのすべて』をもっと知りたい方に自信をもってオススメできるパンフレットです。

そして何より本作『夜明けのすべて』を気に入ったそこのあなた、絶対に買ったほうがいいですよ。

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映画大好き(おじさん)デザイナー。1男1女の4人家族の細大黒柱。オールタイムベスト映画はトレインスポッティング(1996)、ブレードランナー(1982)、ファーゴ(1996)。甘いラブストーリーはちょっと苦手。

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